芭蕉の句


古池や蛙とびこむ水の音

出典は『蛙合』(仙化編)。

   左
古池や蛙飛こむ水のおと
   芭蕉
   右
いたいけに蝦(かはづ)つくばふ浮葉哉
   仙化

此ふたかはづを何となく設(まうけ)たるに、四となり六と成て、一卷にみちぬ。かみにたち下にを(お)きの品、を(お)のを(お)のあらそふ事なかるべし。

貞亨3年(1686年)春、深川芭蕉庵で詠まれた句。

芭蕉43歳の時である。

 上野原市の長峰砦跡にあった池で詠まれた句であるとの言い伝えが甲州にあったようだ。

仙化は江戸の人。貞亨3年、『蛙合』刊。

芭蕉と其角の付合がある。

古池やかはつ飛こむ水の音
   はせを

芦のわか葉にかゝる蜘の巣
   其角


 其角が「蛙飛こむ水の音」の七五に「山吹」と付けたらいかがかと言ったが、芭蕉は唯「古池」と付けたという。

 弥生も名残お(を)しき比にやありけむ、蛙の水に落る音しばしばならねば、言外の風情この筋にうかびて、「蛙飛こむ水の音」といへる七五は得給へりけり。晋子が傍に侍りて、「山吹」といふ五文字をかふ(う)むらしめむかとを、よづけ侍るに、唯「古池」とはさだまりぬ。しばらく論之、山吹といふ五文字は風流にしてはなやかなれど、古池といふ五文字は質素にして実也。実は古今の貫道なればならし。

『葛の松原』(支考編)

「晋子」は榎本其角

古池や蛙飛こむ水の音
   芭蕉

 いかなる意味や有けん吟してなみたを流し唱てさみしみ自然とあらハる中々申すまてもなし凡庸の及ふ所にあらす玄々妙々にして独歩也信すへし仰へし

俳諧百一集』(康工撰)

古池や蛙とびこむ水のおと
   芭蕉

 ある人の説に、「池のふりたる形容はさもあるべし。されど古き池をおしつけて古池といはん事いかゞ」と。按るに、『筑波問荅(答)』の序に、「過にし春のころかとよ、ふる池の乱草をはらひて蛙楽(アガク)を愛する事ありき」と良基公あそばされしうへは難なかるべし。

『随斎諧話』(夏目成美著)

文化3年(1806年)、芭蕉は「飛音明神」の神号を賜った。

山吹の御味方申蛙かな

『七番日記』(文化9年)

一茶のパロディーである。

文政3年(1820年)、『おぼろ物がたり』(鶯笠著)成立。

 芭蕉の句「古池や蛙とひこむ水の音」にちなんで、当時現存諸家の蛙の句を収めたもの。

古池に蛙とびこむ俳画哉

『俳句稿』(明治32年)

青森県八戸市の「芭蕉堂公園」

岩手県盛岡市の天満宮、花巻市の種田天満宮

秋田県大館市の金刀比羅神社、鹿角市の長年寺、由利本荘市の新町交差点

山形県天童市の旧家「山本商会」前旧東村山郡役所

 山形市の神明神社、西川町の旧家

福島県川俣町の頭陀寺

茨城県水戸市の民家竜光院跡、笠間市の玄勝院

栃木県小山市の間々田八幡宮

群馬県川場村の桂昌寺、沼田市の下発知町、前橋市の菅原神社

 高崎市の全透院、高山村の「石古根」バス停

埼玉県羽生市の蓑沢の薬師堂、行田市の大長寺、熊谷市の妻沼聖天山

 滑川町の石川氏宅、狭山市の三柱神社

東京都墨田区の要津寺、台東区の熱田神社

 江東区の江東区芭蕉記念館芭蕉稲荷神社清澄庭園深川江戸資料館

 文京区の関口芭蕉庵、港区の宝珠院弁天堂

千葉県いすみ市の飯縄寺、野田市の郷土博物館

 多古町の大師堂(芋大師)

神奈川県秦野市の旧家

静岡県御殿場市の六日市場浅間神社、伊東市の浄円寺、浜松市の御嶽神社

山梨県甲州市の恵林寺、上野原市の長峰砦跡

長野県高山村、上田市の商工会議所地蔵尊、長野市の南石集会所

 松本市の神沢池、辰野町の矢彦神社、飯田市の北平公会堂

新潟県新潟市の神明宮久昌寺、上越市の五智国分寺

 燕市の戸隠神社、長岡市の八幡神社

富山県入善町の民家

石川県輪島市の總持寺祖院

岐阜県高山市の正雲寺、御嵩町の浄覚寺、岐阜市の大智寺、大垣市の禅桂寺

愛知県岡崎市の聖願寺、一宮市の薬師寺

滋賀県長浜市の福良荘、栗東市のコミュティセンター大宝前、大津市の義仲寺

京都府京都市の永観堂東福寺

三重県伊賀市の蓑虫庵ふるさと芭蕉の森公園

大阪府吹田市の千里南公園

岡山県岡山市の蓮昌寺、倉敷市の熊野神社

山口県岩国市の大応寺、下松市の花岡八幡宮、光市の普賢寺、防府市の防府天満宮

植松八幡宮、下関市の玄空寺

徳島県阿波市の黒田氏宅、美馬市の貞真寺

愛媛県西条市の吉祥寺、今治市の旦三本松、宇和島市の長福寺宇和津彦神

福岡県北九州市の延命寺、築上町の金富神社、直方市の多賀神社

 飯塚市の浄善寺、久留米市の祇園神社

佐賀県唐津市の広沢寺

大分県中津市の中津大神宮、別府市の西法寺、臼杵市の松島神社龍原寺

宮崎県西都市の大安寺池

熊本県熊本市の宗禅寺大慈禅寺に句碑がある。

「芭蕉堂公園」の句碑



長年寺の句碑
   
金刀比羅神社の句碑
   
新町交差点の句碑

   

   


旧家の句碑



竜光院跡の句碑



水戸市の句碑
   
玄勝院の句碑

   


間々田八幡宮の句碑



桂昌寺の句碑
   
菅原神社の句碑
   
「石古根」バス停の句碑

   

   


全透院の句碑



妻沼聖天山の句碑
   
大長寺の句碑

   


石川氏宅の句碑



熱田神社の句碑



要津寺の句碑
   
江東区芭蕉記念館の句碑
   
芭蕉稲荷神社の句碑

   

   


清澄庭園の句碑



関口芭蕉庵の句碑
   
宝珠院弁天堂の句碑

   


飯縄寺の句碑
   
大師堂(芋大師)の句碑

   


秦野市の句碑



浄円寺の句碑



神沢池の句碑
   
高山村の句碑

   


恵林寺の句碑



久昌寺の句碑
   
五智国分寺の句碑

   


聖願寺の句碑
   
薬師寺の句碑

   


禅桂寺の句碑



義仲寺の句碑



永観堂の句碑



蓑虫庵の句碑



大応寺の句碑



普賢寺の句碑



防府天満宮の句碑



玄空寺の句碑



貞真寺の句碑



吉祥寺の句碑
   
旦三本松の句碑

   


長福寺の句碑
   
宇和津彦神社の句碑

   


多賀神社の句碑
   
浄善寺の句碑

   


大慈禅寺の句碑



愛知県東海市の普済寺にある芭蕉の句碑に2句が並刻されている。



古池や蛙とひこむ水の音

ものいへは唇寒し秋の風

宮城県登米市の「奥の細道一宿の地」にもある。


 『はせをつか』(楓幻亜編)に「古池冢 同糸井天王宮社 連中ゝ 古池や蛙飛こむ水のおと」とあるが、現存しない。

芭蕉の句に戻る