歌 碑


与謝野晶子 ・ 与謝野寛(鉄幹)

鉄幹・晶子の旅 ・ 与謝野晶子の旅 ・ 与謝野晶子の歌

とうや水の駅(北海道虻田郡洞爺湖町)


船つけバ向洞爺の桟橋に並木を出でて待てるさとびと
   寛

山畑にしら雲ほどのかげらふの立ちて洞爺の梅さくら咲く
   晶子

豊浦町文学碑公園(北海道虻田郡豊浦町)


有珠の峰礼文の磯の大岩のならぶ中にも我を見送る
   寛

数しらね虹となりても掛かるなり羊蹄山の六月の雪
   晶子

マウンテンサイド(北海道虻田郡倶知安町)


六月に雪残りたる羊蹄の水いろの襞うつくしきかな

立待岬(北海道函館市)


浜菊を郁雨が引きて根に添ふる立待岬の岩かげの土
   寛

啄木の草稿岡田先生の顔も忘れじはこだてのこと
   晶子

花巻温泉(岩手県花巻市)


山のあたままろき緑を重ねたるなかに音しぬ台川の水
   寛

深山なるかじかに通ふ声もして岩にひろがる釜ふちの滝
   晶子

温海温泉(山形県鶴岡市)


さみだれの出羽の谷間の朝市に傘して売るはおほむね女

飯坂温泉(福島県福島市)


飯坂のはりがね橋に雫する吾妻の山の水色のかぜ

飯坂温泉(福島県福島市)


わがひたる寒水石の湯槽にも月のさしたる飯坂の里

東山温泉(福島県会津若松市)


湯の川の第一橋を我がこゆる秋の夕のひがし山かな

竜化の滝(栃木県那須塩原市)


龍化瀑二十五丈を若葉する毛欅のかこめりうへは岩山

古町温泉(栃木県那須塩原市)


今日遊ぶ高き渓間の路尽きず山のあらはる空のあらはる
   寛

真夜中の塩原山の冷たさを仮にわが知る洞門の道
   晶子

谷川温泉(群馬県利根郡みなかみ町)


岩の群おごれど阻むちからなし矢を射つつ行く若き利根川

諏訪神社(群馬県利根郡みなかみ町)


水上の諏訪のやしろの杉むらの中のさくらの白き初夏

三国路与謝野晶子紀行文学館
(群馬県利根郡みなかみ町)


こすもすと菊ダリヤなど少し咲き里人は云ふ猿ヶ京城
   晶子

霧ふかし路は空にも入りたるや一音の雷子の国に鳴る
   寛

長井宿(群馬県利根郡みなかみ町)


訪ねたる永井本陣戸を開き明かりを呼べば通ふ秋風

法師温泉(群馬県利根郡みなかみ町)


草まくら手枕に似じ借らざらん山のいでゆの丸太のまくら

津宮鳥居河岸(千葉県香取市)


かきつばた香取の神の津の宮の宿屋に上る板の仮橋

高徳院(神奈川県鎌倉市)


鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな

愛宕山公園(神奈川県横須賀市)


黒船を怖れし世などなきごとし浦賀に見るはすべて黒船
   寛

春寒し造船所こそ悲しけれ浦賀の町に黒き鞘懸く
   晶子

真鶴岬(神奈川県足柄下郡真鶴町)


わが立てる真鶴崎が二つにす相模の海と伊豆のしら波

下多賀園地(静岡県熱海市)


風涼しひがしの伊豆の多賀に見る水平線のめでたき日かな

多賀湾(静岡県熱海市)


ここに見る多賀の海原ひろければこころ直ちに大空に入る
   寛

棚造り臙脂のいろの網をかく多賀の磯より中野濱まで
   晶子

一碧湖(静岡県伊東市)


初夏の天城おろしに雲ふかれみだれて影す伊豆の湖
   鉄幹

うぐいすがよきしののめの空に鳴き吉田の池の碧水まさる
   晶子

宝専寺(静岡県伊東市)

与謝野寛の歌碑


磯寺の竹の林を通す雨しづかに聞けばまじる浪音

与謝野晶子の歌碑


伊東氏占めて三浦に対したる半嶋の春梅椿咲く

白浜海岸(静岡県下田市)


てん草の臙脂の色を沙に干し前にひろがるしら浜の浪
   寛

白浜の沙に上りて五百重波しばし遊ぶを逐ふことなかれ
   晶子

浄蓮の滝(静岡県伊豆市)


かたはらに刀身ほどの細き瀧白帆の幅の浄蓮の瀧

堂ヶ島温泉(静岡県賀茂郡西伊豆町)


島の洞御堂に似たり舟にして友の法師よ参れ心経
   鉄幹

堂ヶ島天窓洞の天窓をひかりてくだる春の雨かな
   晶子

山梨市駅(山梨県山梨市)


友の汽車われらの汽車と窓ならび 暮れたる山に言ふ別れかな
   寛

いにしへの差出の磯を破らじと笛吹川の身を曲ぐるかな
   晶子

星野温泉(長野県北佐久郡軽井沢町)


秋風にしろくなびけり山ぐにの浅間の王のいただきの髪

薬師堂歌碑公園(長野県上田市)


むら雨か湯場の大湯を降りめぐりしばらくにして山なかば晴る

山田温泉(長野県上高井郡高山村)


鳳凰が山をおほへるおくしなの山田の渓の秋に逢ふかな

熊ノ湯温泉(長野県下高井郡山ノ内町)


熊の子のけがして足を洗へるが開祖といひて伝はるいでゆ

浅間温泉(長野県松本市)


たかき山つゝめる雲を前にして紅き灯にそむ浅間の湯かな

長生橋東詰(新潟県長岡市)


落つる日を抱ける雲あり越の国大河を前にしぐれんとする
   寛

越ひろし長生橋の上しもにつらなれる山他州にあらず
   晶子

船見公園(新潟県上越市)


落日が枕にしたる横雲のなまめかしけれ直江津の海

宇奈月公園(富山県黒部市)


侘びざらん黒部の渓の秋の雨もみちも我も岩も濡るれば
  寛(鉄幹)

おふけなくトロ押し進む奥山の黒部の渓の錦繍の関
  晶子

高岡古城公園(富山県高岡市)


高岡の街の金工たのしめり詩のごとくにも鑿の音を立つ
   寛

館などさもあらばあれ海こえて羅津に対ひて本丸の松
   晶子

しるべ蔵(石川県七尾市)


家々に珊瑚の色の格子立つ能登のなゝ尾のみそき川かな

安宅の関址(石川県小松市)


松たてる安宅の砂丘その中に清きは文治三年の関

串 橋(石川県小松市)


串の橋二つの潟をつなげども此処に相見て我等は別る

あわら温泉(福井県あわら市)


越の国あはらの湯場の雪にさすいみじく清き あけぼのゝ色

蔵の辻(福井県越前市)


松かへで都のあらし山のごとまじる武生のみぞの両側

ふるさとを偲ぶ散歩道(福井県越前市)

与謝野晶子の歌碑


われも見る源氏の作者をさなくて父とながめし越前の山

与謝野鉄幹の歌碑


朝の富士晴れて雲無し何者か大いなる手に掃へるごとし

白鬚神社(滋賀県高島市)


しらひげの神のみまへにわくいづみこれをむすべばひとの清まる

甲山中学校(愛知県岡崎市)


金色の小さき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕陽の丘に

鞍馬寺(京都府京都市)



あゝ皐月ふらんすの野は火の色す君もコクリコわれもコクリコ



何となく君にまたるゝこゝちしていでし花野の夕月夜かな

永観堂(京都府京都市)


秋を三人椎の実なげし鯉やいづこ池の朝かぜ手と手つめたき

八坂神社(京都府京都市)


清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき

清滝(京都府京都市)


ほととぎす嵯峨へは一里京へ三里水の清滝夜の明けやすき

嵯峨野(京都府京都市)


皐月よし野山のわか葉光満ち末も終りもなき世の如く

千里南公園(大阪府吹田市)


何となく君にまたるゝこゝちしていでし花野の夕月夜かな

覚応寺(大阪府堺市)


その子はたちくしにながるゝくろかみのおごりの春のうつくしきかな

高野山(和歌山県伊都郡高野町)


柔肌の熱き血潮に触れもみで寂しからずや道を説く君

鳥取砂丘(鳥取県鳥取市)


砂丘踏みさびしき夢に与かれるわれと覚えて涙流るる

美保関灯台(島根県松江市)


地蔵崎わが乗る船も大山も沖の御前も紺青のうへ
   鉄幹

地蔵崎波路のはての海の気のかげろうとのみ見ゆる隠岐かな
   晶子

川之江八幡神社(愛媛県四国中央市)


ここにして窓に入る山みな青しまして風吹く燧灘より
   鉄幹

少女達錦の袍にまさりたる山のこころに包まれてあれ
   晶子

川之江高校(愛媛県四国中央市)


こゝにして窓に入る山みな青しまして風吹く燧灘より
   寛

少めたち錦の袍にまさりたる山のこゝろに包まれてあれ
   晶子

三津歳神社参道(愛媛県四国中央市)


空を見て峠を行けばおもふかな金生川もその空に鳴る
   寛

うつくしき秋の木の葉のこゝちする伊豫の小嶋の浮ぶ海かな
   晶子

川之江城(愛媛県四国中央市)


姫が嶽海に身投ぐるいやはても馬して入りぬ大名の娘は

石手寺(愛媛県松山市)


伊予の秋石手の寺の香盤に海のいろして立つ煙かな

正宗寺(愛媛県松山市)


子規居士と鳴雪翁の居たまへる伊予の御寺の秋の夕暮

片江風致公園(福岡県福岡市)


やははだのあつき血潮にふれも見でさびしからずや道を説く君

小城駅(佐賀県小城市)


またもなき人の子の父歌の人われに優しき友なる博士
   与謝野晶子

肥の国の三日月村はひしの花こもの花咲き母老いませり
   高田保馬

思へども肥前の小城はなほ遠し門司の港のかかり船より
   与謝野寛

長湯温泉(大分県竹田市)


蛾となりてやがてはここに飛びて来ん芹川に添ふ小さきともし灯

大丸旅館(大分県竹田市)


芹川の湯の宿に来て灯のもと秋を覚ゆる山の夕立   鉄幹

湯の原の雨山に満ちその雨の錆の如くに浮かぶ霧かな   晶子

芹川沿い(大分県竹田市)


山川のならびはやがて水曲がり天の川ほど目に見ゆる川

権現山公園(大分県竹田市)



湯の原の雨山に満ちその雨の錆の如くに浮ぶ霧かな



芹川の湯の宿に来て灯のもとに秋を覚ゆる山の夕立

白鳥温泉(宮崎県えびの市)


霧嶋の白鳥の山しら雲をつばさとすれど地を捨てぬかな

東林寺(熊本県人吉市)


橋を越え中川原越え橋を越え先づ見んとする球磨の禅院

人吉旅館(熊本県人吉市)


川あをく相良の町の蔵しろし蓮の池に浮かべるごとく

芳野旅館(熊本県人吉市)


撥早く六調子出づ球磨川の画舫を借りて月にあそぶ夜

人 吉(熊本県人吉市)



ほの白く木山の城の石垣のたそがれ初めて川風ぞ吹く
   寛

相良びと白をば著つつあしたより大橋を行く川の初秋
   晶子



球磨の川相良の城の山黒しながれの末に月おちてのち



山かげの船ハ灯を置くわが船はな不月を置く川の中ほど
   鉄幹

大空乃山のきはより初まると於なじ幅あるくまの川か那
   晶子



わが船に別れがたしと水かけし人見ゆるなりなほ水上に

十三仏公園(熊本県天草市)


天草の十三仏のやまに見る海の入日とむらさきの波
   鉄幹

天草の西高浜のしろき磯江蘇省より秋風ぞ吹く
   晶子

霧島高原(鹿児島県霧島市)


牧園へ太鼓踊を見に来よと便り来りぬ瓜を割るとき

隼人塚(鹿児島県霧島市)


隼人塚夕立はやく御空より馳せくだる日に見るべきものぞ

性応寺(鹿児島県姶良市)


老の身の相見て嬉しをさなくて加治木の寺に植ゑしたぶの木
   寛

加治木なる五つの峰の波形の女めくこそあはれなりけり
   晶子

轟之瀬公園(鹿児島県薩摩郡さつま町)


さかしまに落ちつと見ればほがらかに轟の早瀬わが船すべる
   寛

轟きの瀬は川の火ぞ少年はつぶてとなりて焔に遊ぶ
   晶子

湯之滝公園(鹿児島県薩摩川内市)


水鳴れば谷かと思ひ遠き灯の見ゆれば原と思ふ湯場の夜

古里公園(鹿児島県鹿児島市)


桜島わが枕よりやや高く海に近かる夏の月明

瀬平公園(鹿児島県南九州市)


迫平まで我れを追い来りて松かげに瓜を裂くなり頴娃の村をさ
   鉄幹

片はしを迫平に置きて大海の開聞が岳立てるなりけり
   晶子

指宿市役所(鹿児島県指宿市)


ヒビスカスまた佛桑花ゆめならで常世の国を見るここちする
   寛

扇やしなつめの椰子の上に舞ふ南の国の夏のしら雲
   晶子

指宿温泉(鹿児島県指宿市)


白波の下に熱砂の隠さるる不思議に逢えり指宿に来て

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