鶴田卓池



卓池の句

萩芒月か出れハ水の中


こがらしや夕山鳥の啼わかれ


立て行鴫のあと水渡りけり


家五尺迹へひかばや梅の花


人のうへにながめられけり女郎花


裸身に簔来て来たり田にし賣



見ぐるしき旅のこゝろよはるの雨


春雨や門に砂もつ桑どころ


戸口まて植てたのしき早苗かな


山寺やいくつ着せても薄ふとん


応々と海にこたへつはるの雨


旅人の機嫌直しぬ啼水鶏


きさらぎや花に煤はくよし野山


さゞ波や華に宿かる七所


きさらぎや花に煤はくよしの山


鴬とけふも遊びぬうめの花


葺やれて蜂の巣に降時雨哉


名月をはれに山家の祭かな


雪ハ良き物よ木の切竹の端


夜はなしの戻りにも引鳴子哉


梅持て尻から這入戸口かな


さゝなみや花に宿かる七所


家五尺あとへひかはや梅のはな


月の出てかはるや海の鳴る所


山鳩は何が不足ぞはなの雲


はるか過てそれとはしりぬ時鳥


山畑や雲かゝるまで蕎麦の花


艸の戸の梅はこまかに咲にけり


二度寝ても日も西にあり藤の花


老ぬればおくるゝもよし衣更


殘なく咲て是からよるの梅


二空に鳴て跡なしほとときす


むら雨の匂ひいやしや花芒


梅持て尻から這入る戸口かな


折頃や市にちる日のうめの花


運音にきけんしらるゝ水鶏哉


若葉見に出るや近処の起ぬ内


はやう出て足もはこへぬ蛙かな


   西行讃

世を捨てこそ花もちれ笠の上


のこりなく咲日はしらす藤の花


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