岩間乙二

『しをに集』(亀丸編)


岩間乙二の追善句集。

文政6年(1823年)7月9日、岩間乙二は68歳で没。

文政6年(1823年)9月、『しをに集』(亀丸編)刊。自序。馬年跋。

亀丸は仙台藩士横田始成の息女。後剃髪して足了庵禾月と号した。

安政4年(1857年)、74歳で没。

   追善之発句

   父のなきからを弔まいらせて家に帰る時、
   亀丸も墓参せんとて行にはからすも二木の
   松近き所にて逢ぬ

物いはし露指さして小一時
   きよ女

   起しても亦伏菊や九月尽、と斯申てこの花
   を惜みし老人の此頃をもまたて泉下の人と
   なり給ひけるを

ふみ月やすかれし菊のやかてさく
   馬年

   師のみはかに香をひねりて

白露か仏の顔歟松くらし
   亀丸

   歌 僊

   松窓独坐

名月はすすしき苔の匂ひかな

 露の光のあまる雀麦
   亀丸

あちむらも雁も来るなと垣根して
   清女



蓮の香や遠し近しと敷むしろ
   京大阪
雪雄

玄鳥の来て初けり酢の小売
三津人

芦萱の夜寒覚へて年のよる
奇淵

雪を出て亦はつ雪のみやこかな
一草

蕣にしまりのつくや我こころ
   アキ
玄蛙

鍵かりて明る家ありうめの中
   カハチ
耒耜

雨風に空さたまりて飛つはめ
   ハリマ
玉屑

鳥雲に入熊谷のつつみかな
   ヲハリ
士朗

曲り曲り行そ柳の水の泡
岳輅

二度寝ても日も西にあり藤の花
卓池

花かちにならぬ先なりかきつはた
秋挙

鶯と我との中のすたれかな
   カヒ
可都里

凩に猶あり明の哀なり
蟹守

はるの夜に細引を喰ふねつみ哉
嵐外

人なれぬ顔や田中に立柳
漫々

めつらしき年のまわりや帰花
   シナノ
八朗

名月や夜はかくれて松の風
雲帯

白露かこほれて来たり竹の杖
若人

風の薄ものの奥意もかくあらん
武曰

はや淋し蕣蒔と云はたけ
一茶

千代の間を鶴のまたきし菫哉
   エチゴ
幽嘯

白菊はよひよき名なり草の門
   イツ
一瓢

それと見て見へすなり行鵜舟哉
   サカミ
葛三

ころけても遊ひになるや蝸牛
雉啄

散る柳芦も穂くせの付に鳧
   江戸
道彦

青草の少しもあれは時雨けり
成美

萩咲て夫婦のこことかくれけり
巣兆

漣のあとさる音や今朝のあき
護物

おさすとも明へき花の戸口かな
何丸

山くれて人ひと覗く鳴子かな
車両

大雪やなけは千鳥の見へて来る
詠帰

細沼やいて橋かけてかきつはた
応々

珍重す雪すこし散庭の笹
寥松

年月のふけるかさりや門の雪
碓嶺

宮城野やつらつら蝶の死所
可布

鮓つけて出れは庭に忘艸
久藏

花に酔てその日その日のいのち哉
鞠塢

梅いそけ硯ももとはさされ石
蕉雨

名月の枝うつりする山路かな
鶯笠
   ヒタチ
めやすかれと作りたてしや雪仏
   下ツケ
湖中
   下フサ
秋となりて哀見するや二日月
由之

あさ風や他人のやうにうく蛙
李尺

粟の穂の少し夜寒をこほしけり
素英

網干の集る門の清水哉
桂丸

こからしや鼠は鳥になりもせす
隨和

のひ足らぬうちや実の春の艸
素月

飛とひに八重芥子咲やけしの中
雨塘

荒海に二百十日の月夜かな
素廸

一時雨鴫もはこふや朝の中
鶴老

月を秋といふ人恋し角田川
李峯

客人(まろうど)も間のあるやうに春の雪
国村

よろこんて鳴てあらうに閑古鳥
   アキタ
渭虹

ちる花や手をさし出せはさのみ又
五明

朝水鶏あやめ苅られて来すなりし
   ミハル
掬明

順礼の鐘撞すてし若葉哉
   スカ川
雨考

桃咲や軒端のきはの不二の山
多代女

行としや世にふるされて葛の松
   モトミヤ
冥々

雨雲やよし切のなく麦のなか
   フクシマ
夢南

ほのほのと梅に別あり山のうめ
   ナンブ
平角

蝙蝠よ来ん世は鶴歟うくひすよ
素郷

      ○

はるの夜や燈に見ゆる風車
白居

更衣蚫(あわび)の玉に喰あてし
巣居

花つくや深山分出る濡うつぼ
鬼子

名月や草には長きはくれ芦
鉄船

      ○

鰒くふておほつかなくも月夜哉
梅屋

折てやる月夜は持たす桃の花
雄淵

はつ音とは春のことなり時鳥
心阿

野の草に追あけられて月夜哉
百非

葛はなや入江の風の吹登る
大呂

村雨に哀さますなからす瓜
十竹

葛水も奢のさたや草まくら
士由

抱籠や市の月夜の身に添す
清女

淋しさや鴫見て立は鴫も立
馬年

   磯 家

人音に蟹の這入きくの花
亀丸

      ○

酒折は十日も遅し植る菊
松窓

 水とかすみの分るあけほの
亀丸


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