小山魯恭

『糠塚集』

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文政8年(1825年)、刊行。虎杖庵跋。

くさ枕まくらかえても盆の月
   魯恭

荻萩や月をあるじに魂奠
   素友

松の木を廻りて盆の月よ哉
   石女

寐ぬ内にはや木がくれぬ盆の月
   葛古
  諏訪
きのふにも降べきものを春の雨
   若人
  ハセ
正月になれば梅咲小いゑかな
   天姥
  
梅さくや終言ふ事の後になる
   雨紅
 信 上田
猶豫して鳴も淋しやゆきの鳥
   露丸
  戸倉
梅が香やきかんとすれば人のくる
   鳳秋
  淺野
大風のあとやおほきな草の露
   文虎
  長沼
夕ぐれの須磨にかぶさる柳かな
   春甫
  湯田中
火の影や萩のおくにも魂奠
   希杖

我ものとなしに朝皃咲に鳬
   文路

人につれてとしどしふへる柳かな
   武曰

よしあしをはなれし炭の匂哉
   兀雨

蚊に迯る工風はつかず草の庵
   八郎

   虎杖菴ハあが師葛三ふるく遊し所とて案内せら
   れし、幸なる哉疾御佛に逢奉らんとて、千曲川
   の流れに口そゝぎて

またとなき月よや盆の善光寺
   薙啄

梨子の花咲や先祖の百年忌
   雨塘

   志賀山越

草臥る障花處々
   可布
  甲州
八月や木を吹風に日のあたる
   嵐外
  三州
鳴蛙聲明らけしほとゝぎす
   秋擧

殘なく咲て是からよるの梅
   卓池

居眠りて寐覺の付や時鳥
   而后
  奥州
單もの出したばかりを老が夏
   曰人

持かへて見てもくさ也女郎花
   馬年

椋の木に洩る灯の寒し渡り鳥
   多代女
  豆州
正月はまたでも來や老の上
   一瓢

   花の夕の嬉しさも、雪の旦のかなしミも、只心
   一の置所ならめ

  江戸
能出來てはり合のなき燈ろ哉
   應々

麥まくや池の家鴨のかへる迄
   蕉雨

久かたやきかぬ年なき郭公
   雪雄

寒さうで背も當られぬ柱哉
   鶯笠

一しきりやぶ移りする時雨哉
   護物

一木ふた木算て果ハ花の中
   碓嶺

老ぬれバ花にも花のまたれ鳬
   碩布



   去年直江の津に遊行(ゆぎょう)せし折から老人
   を訪(と)ひける時の卷なるを、表六句を爰(ここ)
   にあらはす

昼の蚊やだまりこくつて後から
   一茶
 菖蒲の露をあびる旅笠
   魯恭
ひよろ長き城下はづれに海みへて
   茶
 撞ききる鐘についと入る月
   恭
汁なべにほつほつ黄菊むしり込(ころ)
   茶
 名もなき風の吹にふくあき
   恭



去年今とし我分ちなし呑みつゞけ   鵬齋



ことし七月既望夏の糠塚
山に上る勝景はさておき麓の村
々魂送り火焚てなこりをおしみ
天も隈なく晴れて仏の
帰路を照し玉ふさなから別世
界也けらし
一茶

精霊の立ふる廻の月夜かな

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