智徳寺

『鄙さへつり』(茶山編)


 天保14年(1843年)、松岡茶山が芭蕉翁百五十回忌に芭蕉の句碑を建立した記念集。梅室素信序。



祖翁

なかき日を囀りたらぬ雲雀哉

鄙囀集

     天保十四年卯四月廿五日
     於勝流山智徳禅寺興行

   追善脇起之俳諧
  祖翁

永き日を囀りたらぬひはり哉

 むかしの春の見ゆるすミれ野
   北洋



朋友門人の信にたすけられ祖翁の遠忌をとり行ひ、はた一基の碑をいとなミいさゝか報恩の微意をあらハし道の冥助を仰き奉りて

陰ふかき夏花や麦のむら尾花
   茶山


栃尾
迎火の影まほろしや水のうへ
   柳涯
山城
我影の先へ来て居る清水哉
   梅室
セツゝ
のせて置くほとは葉も有り蕗の薹
   鼎左
オハリ
紫陽花や莟あつめて花ひとつ
   而后
三河
のこりなく咲日はしらす藤の花
   卓池
遠江
かるとなくかすともなしに花の宿
   嵐牛
カヒ
老にけり火桶は顔をあふるもの
   嵐外
下総
声も身もかるう生れし雲雀かな
   月杵

稲妻やきりゝと回す楫の音
   竹煙

空にまて枯色うつる野末かな
   半湖
ヲク
庭掃たはかりてすます子の日哉
   たよ女

いつ見るも通りかゝりや桐の花
   清民

寒うてもむくうても野ハ梅の花
   壮山

朝市のかへるさ霜に別れけり
   舎用
出羽
今日こそは老もわすれて春の月
   フ山
ムサシ
きさらきやあふらのやうな雨二日
  四山子

ゆう雲やほとゝきす鳴く青葉越し
  瀾長子

道芝にこす枕なし春こゝろ
   鳳郎

家有りとしらて越えけり冬の山
   碓嶺

闇といふ宵も明るし春の水
   松什

散るよりも切てまハらや芥子の花
   西馬

植たれハ日もたゝせたし菊の苗
   万古

雉子の声物陰に寝て夢や見し
   由誓

空にさへ偽の有り天の川
   逸淵

蚊の声の消ゆくかたや萩の花
   溪斎

背を見せて浅茅を走る水鶏哉
   梅笠

元朝や左右へ払ふ眉のちり
   寄三

泌る湯や花の夜明の別坐敷
   見外

さし汐に水音とめるあつさ哉
   卓朗

うくひすに人の恋しき野名哉
   等栽

日くらしや夜は鳴もせて暮いそき
   抱義
葛巻
古芦のかさつきそめてかへる雁
   乙洋

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