正風院庭前 |
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評判の牡丹はどれとどれにかな | 素鏡 |
是程のぼたんと仕方する子哉 | 一茶 |
大空や理屈のとれし秋の暮 | 魚淵 |
涼しさや夜もつき添ふ歩き神 | 春甫 |
小坊主が二番泣ぞよ小夜砧 | 掬斗 |
あさぢふや菫じめりのうす草履 | 完芳 |
寝《よ》(によ)とすれば拍子の揃ふ砧かな | 呂芳 |
古 |
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見ても露見ても露也五十過 | 松宇 |
東叡山にて |
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高井郡 |
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鶯も上きげん也寛永寺 | 春畊 |
女の名書て盞流しけり | 知洞 |
村なかや水ッ溜りの春の月 | 梅塵 |
瓢箪で酒売る家や柿紅葉 | 希杖 |
水内郡 |
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木がらしや馬に付たる石ぼとけ | 文路 |
うぐひすに蔦とらまへて覗きけり | 武曰 |
宇治にて |
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茶の花やいとけなき子の手もとゞく | 白斎 |
鼠にも茶の子ふるまふ夜寒哉 | 文虎 |
古 |
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鶯の声費して日暮たり | 梨翁 |
早乙女の子をもぬらして戻りけり | 八郎 |
鬼貫が袖より出たり蝸牛 | 雲帯 |
元日や此界隈はみな親子 | 魯恭 |
秋風や逢ふを別の行脚同士(どし) | 葛ふる |
草の穂や袂へ転る露の玉 | 素鏡 |
風冷り冷りからだのしまりかな | 一茶 |
三 越 |
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里の子や木の葉並べて神迎 | 幽嘯 |
陸 奥 |
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ある僧の澄して去し清水かな | 冥々 |
寒空やいつ迄柿の鳴子引 | 雨考 |
十六夜やまだ夕顔の実なし花 | たよ女 |
人来れば行灯むける青田かな | 夢南 |
にこにこと夜は明にけり春の山 | 百非 |
折よいか貰れ安(易)きんめの花 | 馬年 |
山住や思ひ捨ても雪ははく | 雄淵 |
上 野 |
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万歳やおどけた神のゝり移り | 鷺白 |
武 蔵 |
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浮魚の蝶に逃たる二月かな | 呂律 |
いなづまや黄昏かけて有磯海 | 国村 |
恋 |
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あはぬ恋しかも男に生れけり | 寥松 |
切凧や柿の木越へ(え)てあらし山 | 鶯笠 |
時鳥亀に慈悲する人の上 | 焦雨 |
東風吹くや川水汲で上る土手 | 護物 |
晴てけり虎が雨ぞと人いへば | 対山 |
川留の御(後)夜つめ引てほとゝぎす | 鞠塢 |
水こぼす台の小寺やおぼろ月 | 車両 |
松風や紅葉のおくの往生寺 | 永帰 |
置かけて雨と成りけり山の露 | 碓令 |
棚一ッ心で釣るつてふゆ籠り | 一峨 |
下 総 |
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古 |
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霜がれや鍋で水汲む角田川 | 双樹 |
古 |
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何故に一ッ残るや小田の雁 | 立砂 |
入らぬ木の花も咲く也春ぞとて | 斗囿 |
蝶とぶやねから歩まぬ初太良(郎) | 至長 |
永き日や夫婦山見に畠迄 | 素迪 |
夕鰺の鰭に晴けり富士の山 | かつら丸 |
夕風や京の豆麩に梅の花 | 李峰 |
下やみの小口に見ゆるけぶりかな | 月船 |
梟も夜寒をなくやうらの山 | 若雨 |
木の間から人の来にけり春の雨 | 鶴老 |
鶯のあくもの喰ひや老仲間 | 雨塘 |
常 陸 |
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枯芦の声が通ふや油皿 | 李尺 |
あつき日や人あらはるゝ芒原 | よし香 |
墨水 |
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春風や塵(ごみ)におさるゝ都鳥 | 松江 |
上 総 |
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釈 |
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消る時御供申さん雪仏 | 徳阿 |
女 |
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名月や乳房くはへて指して | 花嬌 |
あれしきの草さへ虫の世也けり | 雨十 |
散花や凡夫ざかりの笑ひ声 | 白老 |
安 房 |
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よし切や兄弟中も与佐(謝)の海 | 都(郁)賀 |
鶏頭と我夜や明て又暮る | 杉長 |
伊 豆 |
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釈 |
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乙鳥(つばくら)の来て口上の長さかな | 一瓢 |
相 摸(模) |
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蜑が子の泣ずに遊ぶかすみかな | 洞々 |
転げてもあそびになるやかたつぶり | 雉啄 |
甲 斐 |
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道連に別れて多きさくら哉 | 漫々 |
鴨などの心で見たる柳かな | 蟹守 |
山陰や何々の墓ありて | 嵐外 |
山 城 |
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あつき日や立よる陰もうるしの木 | 雪雄 |
三 河 |
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長月やいかなる日にも菊の花 | 秋挙 |
梅持て尻から這入る戸口かな | 卓池 |
攝 津 |
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古 |
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草の月雉子も鳴かずに居られまい | 一草 |
ほとゝぎす膝のあたりの夜の景 | 奇淵 |
虫のなく中に大きな酒屋哉 | 三津人 |
河 内 |
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明行や千鳥の声の水になる | 耒耜 |