大島蓼太
蓼太の句
よし野にて
白雲や散る時花のよしの山
割あまる都の外は桜かな
植なから松に凌くやはつしくれ
鷺と見て櫂にも立や今朝の秋
三弦も接穂時なり梅の花
一年に三ツの月夜ぞ郭公
夜もすから我に髭ふる時雨かな
灯火を見れは風あり夜の雪
名月や水を観ずる須厂の巻
鶯やしつまりかへる奈良の町
春の日や門ゆく梵論の罔両(かげぼうし)
此君とけふは引るゝ小松かな
高欄に鳥遠うして牡丹哉
我ものに手折ばさびし女郎花
白々と桜にかゝるしくれ哉
菜の花爾長閑き大和河内かな
うらやまし年々へらぬ友千どり
蝉啼や世の外ならぬ峰の松
うかうかとまた花のある瓢かな
鴬にしのぶ帋衣の立居かな
習ふとおもふ夜もあり鉢たゝき
蕎麦を見て夫から戻る花野哉
是にこそ煤もはき候花のはる
片枝は咲て止しか帰り花
二三尺たつ秋見たりをみなへし
上野ゝ夕はえいとめてたふましましける築地のうちを察し奉りて
今時分鉤簾や捲くらん夕桜
五月雨やある夜ひそかに松の月
玄鳥の塵見て歩行都かな
白がさねにくき背中に物書む
みな塵ぞ雪に対しておもふ事
捨鍬に日永き水の行へかな
茎たちや老婆深切もてなせり
朝がすみ麥引立て晴にけり
参宮の留守の七五三あり春の風
ひとつづゝ月見た痩を田毎哉
諏訪 秋の宮
花よりも紅葉はこき涙かな
ほとゝきす一聲夏をさためけり
もの書ばかつらに似たり白うちハ
筆捨山
筆取て向へば山の笑ひけり
人音の止時夏の夜明かな
足袋やからたひはいて出る初卯哉
馬かりてかはるがはるに霞みけり
琴ひとり雪を感る空音かな
打明て見せけり冬のすみだ川
新月やことしのけふのすみだ川
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