渡辺雲裡坊

『桐の影』(巨洲編)



宝暦11年(1761年)4月27日、雲裡坊は69歳で没。

安永6年(1777年)、雲裡坊十七回忌追善集。

安永六年酉四月廿七日於幻住庵興行

   雲裡老人十七廻忌懐旧之俳諧

住し庵の井に影ふかし桐の花
   巨洲

古茶をすゝりて在し世を泣
   蝶夢



   此墓前に来りて
 浪花
住かはる古巣や月の友ちとり
   二柳

   雲裡叟武府の中橋にやとりして一壺の酒を蔵し
   一斗の粟をたくはへたゝひたこもりに篭りて一夏
   の発句おこたらしとのもふけなりしも遠き昔の俤
   にたちて
 洛陽
なつかしき夏書の墨の匂ひかな
   蕪村

   老人ありしむかしは祖廟につかへ幻住庵を建ける
   その遺徳むなしかれて今もこの樹に甘棠のおもひ
   をなす

軒に植し椎もしけりて十七年
   蝶夢



   四季発句
 仙台
山吹や角もてけつくたはれ牛
   丈芝
 江戸
揚簀戸のひとり下りたり雪の暮
   秋瓜

こからしや山に槇たつ色はかり
   霜後

添竹の朽て柳のそたちかな
   烏明

習ふとおもふ夜もあり鉢たゝき
   蓼太

舵取のよけあふこゑやおほろ月
   柳几
 駿河
牛かりて宇津の山辺や小六月
   月巣
 参河
山道や案山子見てから人恋し
   木朶

   老木に対して
 伊勢
恥多き我には似さるさくら哉
   坐秋
 美濃
侍のはしり通るや麦ほこり
   君里
 伊賀
重たけに足ぬきかへて田草取
   桐雨
 加賀
東風ふくや鳥また塵をほしからす
   見風

いなつまやしつかならさる秋の空
   闌更
 越中
秋風に吹れて居るやかしや札
   康工

春雨や故郷遠き今参り
   依兮

   述 懐
 筑後
海老野老おもへは我もかさり物
   而后
 安芸
罌粟白し一ひら散てやめにけり
   風律
 洛陽
花の陰見しらぬ人の笑顔かな
   重厚

鳴神のけふかる跡やほとゝきす
   蝶夢
 
春雨や花さかぬ身は寝てくらす
   諸九

下り日に見のはす岡のすゝき哉
   巨洲

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