俳 書



『あけ烏』(几董編)

安永2年(1773年)、『あけ烏』刊。自序。蕪村七部集の一。

   それよりして夜明烏や子規

この句の心によりて、此集の題号を明烏などよばんも可なるべし、と申されしより、例の拙き筆に任せ、よりより聞へたる発句ども、且、我門に遊べる徒が巻々までもつゞりそへて、めづらしからぬ小冊となし侍るのみ。

安永癸巳之秋
   高几董書

ほとゝぎす古き夜明のけしき哉
  几董

 橘にほふ窓の南(みんなみ)
   馬南



   四季混雑

不二ひとつ埋づみのこして若葉かな
   蕪村

春の夜や鼓しらべる誰が家
   キ菫

   もろこしの詩客は一刻の霄をおし
   み、我朝の哥人はむらさきのあけ
   ぼのを賞せり。

春の夜や霄あけぼのゝ其中に
   蕪村

いなづまやされば夜来る杉の間
   百池

   竹酔日
  仙台
たゞたのし竹植る日もひとり坊
   丈芝
  大坂
其中のひとつは落よ凧(いかのぼり)
   旧国
  伊勢
夜をかけて青キにかへる柳かな
   宗居

   題閑居
  いせ
梅がかにおどろく梅の散日哉
   樗良
  名古屋
(う)め咲て十日に足らぬ月夜哉
   暁台

   蓬莱に聞ばや とは翁の歳旦也。

行春やいせの便もあまたゝび
   几董

苗代や鞍馬の桜ちりにけり
   蕪村
  結城
山清水靭(うつぼ)ヘまはりけり
   雁宕
  江戸
関の戸に秋風はやし麦畠
   泰里
  
今朝秋としらで門掃く男哉
   存義

牡丹散て打かさなりぬ二三片
   蕪村

渋柿にけふも暮行烏かな
   二柳
  加賀
松一里帰路暑き日を荷ふ哉
   麦水
  東武
我ものに手折ばさびし女郎花
   蓼太

   ことし岡崎の春夏を訪ひて、此二
   句を聞く。

浜道や砂の中より緑たつ
   蝶夢

三条へ出てこそ見たれ初茄子

渋柿や街道中へ枝をたれ
   蝶夢

   ひがし山の秋なつかしく出て、例
   のてふむ庵に立よりしに、寒卿(郷)
   といへる題を探りて。

何急ぐ家ぞ燈ともす秋の暮
   几董

   はたとせばかりむかし、亡父が歳
   暮に。

牛馬には師走のありて宝哉
   几圭

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