俳 人
岱水
江戸深川の芭蕉庵の近くに住む。初め苔翠と称した。姓氏不詳。生年不祥。
芭蕉の句碑
雨をりをり思ふことなき早苗哉
「岱水亭影待に」と前書きがある。
『蕉翁句集』(土芳編)は「貞享四卯ノとし」とする。
元禄5年(1692年)9月、洒堂は深川の芭蕉庵を訪れた。
深川夜遊
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青くても有へきものを唐からし
| はせを
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提ておもたき秋のあら鍬
| 洒堂
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暮の月槻のこつはかたよせて
| 嵐蘭
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坊主かしらの先に立るゝ
| 岱水
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元禄壬申冬
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十月三日許六亭興行
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けふはかり人もとしよれ初時雨
| ばせを
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野は仕付たる麦のあら土
| 許六
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油実を売む小粒の吟味して
| 洒堂
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汁の煮(にえ)たつ秋の風はな
| 岱水
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支梁亭口切
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口切に境の庭そなつかしき
| 芭蕉
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笋見たき藪のはつ霜
| 支梁
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山雀の笠に逢ふへき草もなし
| 嵐蘭
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秋の野馬のさまさまの形り
| 利合
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旅人の咄しに月の明わたり
| 洒堂
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大戸をあけに出つる裸身
| 岱水
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水鷄のたま子の數を産そろへ
| 桐奚
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あらたに橋をふみそむる也
| 也竹
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元禄6年(1693年)7月、史邦・芭蕉・岱水で三吟歌仙。
三 吟
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帷子は日々にすさまじ鵙の声
| 史邦
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籾壱舛(升)稲のこき賃
| ばせを
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蓼の穂に醤(ひしほ)のかびをかき分て
| 岱水
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元禄6年(1693年)、9月中旬、岱水亭に影待の宴に招かれて句を詠んでいる。
影待や菊の香のする豆腐串
芭蕉の句「生ながらひとつにこほる生海鼠哉」に岱水は「ほどけば匂ふ寒菊のこも」と付けている。
元禄7年(1694年)5月11日、芭蕉は江戸深川の庵をたち、上方へ最後の旅する。門人たちは川崎宿まで送り、送別の句を詠んでいる。
川崎宿(歌川広重『東海道五十三次』より)
翁の旅行を川さきまで送りて
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刈こみし麦の匂ひや宿の内
| 利牛
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おなじ時に
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麦畑や出ぬけても猶麦の中
| 野坡
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おなじこゝろを
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浦風やむらがる蠅のはなれぎは
| 岱水
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元禄13年(1700年)、岱水は芭蕉庵の翁七回忌で歌仙を巻く。
某師の閑座をとひ来る小鳥ともあ
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はれみ給ふを思ひでて
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| 岱水
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枯庭に米くれられし雀とも
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墨の付たるふるき小蒲團
| 利合
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宝永元年(1704年)、『木曾の谿』(岱水編)刊。
岱水の句
浦風やむらがる蠅のはなれぎは
手の下にしるやいなごのちからあし
煤の手に一歩を渡す師走哉
桃の花見るや三つ葉のひたしもの
起々の心動すかきつはた
夢になる夢や葉にして枯野塚
梅咲てなをうこかすや馬の花
麥のほやけふは働かぬうらの波
雨戸挽音や東に三かの月
鶏頭に双ぶや寺の一旦那
喰つみや木曾の匂ひの檜もの
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