杉山杉風
『冬かつら』
(採荼庵杉風編・採荼庵梅人校)
元禄13年(1700年)、採荼庵杉風編。芭蕉七回忌追善集。
寛政2年(1790年)7月、採荼庵梅人序。
山口素堂は芭蕉庵の翁七回忌で、追悼7吟を手向ける。
ことしかミな月中二日芭蕉の翁七回忌とて翁の住捨ける庵にむつましきかきりしたひ入て堂あれとも人は昔にあらすといへるふることの先恩ひ出られて涙下りぬ。空蝉のもぬけしあとの宿なからも猶人からのなつかしくて人々句をつらね筆を染て志をあらはされけり予も又ふるき世の友とて七唱をそなへさりぬ
其一
くたら野や無なるところを手向草
其二 像にむかひて
紙きぬの佗しをまゝの佛かな
其三
像に声あれくち葉の中に帰り花
其四
翁の生涯風月をともなひ旅泊を家とせし宗祇法師にさも似たりとて身まかりしころもさらぬ(ママ)時雨のやとり哉とふるめきて悼申侍りしか今猶いひやます
時雨の身いはゝ髭なき宗祇かな
其五
菊遅し此供養にと梅はやき
其六 形見に残せる葛の葉の餘墨いまたかはかぬかことし
其七 予か母君七そちあまり七とせに成給ふころ文月七日の夕翁をはしめ七人を催し、万葉集の秋の七草を一草つゝ詠しけるに翁も母君もほとなく泉下の人となり給へはことし彼七つをかそへてなけく事になりぬ
俤や冬の朝日のこのあたり
| 曾良
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こからしの身は七とせや像の皺
| 史邦
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ある年の初しくれを凌き予か茅舎
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に笠を脱給ひしころ
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折々に伊吹を見ては冬籠り
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折々の時雨伊吹ハぬらせとも
| 千川
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某師の閑座をとひ来る小鳥ともあ
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はれみ給ふを思ひでて
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| 岱水
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枯庭に米くれられし雀とも
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墨の付たるふるき小蒲團
| 利合
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