閑斎
『俳諧道中双六』
この叟のかくれ里を二疊菴とよび |
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て、夏と冬との垣ねをわかつ。 |
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短夜を人のさゝせぬ戸口哉 | 樗堂 |
身ひとつや田螺の蓋も明の春 | 一草 |
關亭堂の奥ふかめて、芭蕉翁の肖像 |
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をやすらかにおき、かたはらにむす |
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べる草の戸より生駒山見ゆる。 |
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ゆく春や日和すはらば鶴居らず | 駝岳 |
霞ふむ鴎の口の乾き哉 | 三津人 |
正風道場の山いづこよりも見ゆる。 |
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明らかに山見る春の寒哉 | 舛六 |
浪花より都へかけはしわたす。 |
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夕立にうたせておきぬ旅衣 | 月居 |
このあたり夢つくる枕をうる。 |
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音にその俤みゆるきぬた哉 | 虎杖 |
子規それぞと見れば山の鐘 | 玉屑 |
雲みづの心かよふ土鍋あり、この菴 |
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泊。 |
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ぐるりから月夜になるや雲の峰 | 雪雄 |
ふたつならびたるものはまれに。美 |
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し松またすくなし。 |
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蝸牛ひとりをにすむ小家かな | 亞渓 |
薺うつひゞきに出たり月の梅 | 志宇 |
奈良の松壽叟はこの業の手垂にて |
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蕉翁の像をつくりて送るさちに、 |
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一宇をいとなみて俳諧堂と唱ふ。 |
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野を燒や海のあかりは松の月 | 耒耜 |
鶴龜の齡にくらぶる年ふりしひさ |
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ごと、西山の枇杷の木釖とは、常 |
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に愛するのふたつ也。 |
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月と水とともゝたれする夏の夜や | 士朗 |
しら雲の中にも花のちから哉 | 岳輅 |
朝顔色の泉湧いづる |
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春雨にうつす花屋が灯哉 | 卓池 |
人の世の蓬莱は米の林哉 | 秋擧 |
東西百里まりを見わたす、いさほ |
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しといふはるけき眼鏡あり。 |
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三日月も御慶也けり墨田河 | 蕉雨 |
雁ひとつおくれて鳴歟はやいのか | 壷伯 |
寒かりし山をおへすや春の雪 | 素檗 |
春の夜に細引を喰ふ鼠哉 | 嵐外 |
行春や片足長きふじの山 | 漫々 |
糸竹の音に通ひけり天の川 | 可都里 |
鎌倉の代の今見ゆ 洞、 |
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つれなしといはぬばかりに初櫻 | 葛三 |
十時菴に、魚つり草の花軒端に埋ミ |
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てさく。 |
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鶯の老ぬさぞかし梅田枇杷 | みち彦 |
下京や水鶏まちてもなぐさむ夜 | 護物 |
彌生の末よりふミ月はじめまで、 |
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子規なく空、蚊の遊ぶ藪あり。 |
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なにゝこの袴きる世ぞ蝉の聲 | 成美 |
これ見よといはぬばかりの一葉哉 | 一瓢 |
露ひとつひとつのぼりて澄空か | 幽嘯 |
初秋や山の風情のかろくなる | 諫圃 |
どこまでも蜻蛉あがるや駿河町 | 久藏 |
獨樂寺みゆる。 |
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鍬の柄に鶯なくや小梅むら | 一茶 |
むかしより小さいとやら閑古鳥 | 寥松 |
花峰月夕雪旦、この三人の猩々を |
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愛す。 |
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舟曳や五人見事に梅を嗅 | 巣兆 |
虎杖の背戸もふさがぬ紺屋哉 | 國村 |
五月雨のあすはひの木もたのミ哉 | 成美 |
おくれ子をなく乙鳥の親 | 閑齋 |
麻染るさらさら小川さらさらに | 一茶 |
何とかやいへる山人のめでたりし |
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蟇、この扉をあるじとすれば、い |
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づくまでも心かよはぬくまなし。 |
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花の世や垣は結ずもあらまほし | 湖中 |
筑波峰を窓蓋にもたのむ柴の戸。 |
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八ツ迄の浦淋しくも心太 | 翠兄 |
佛頂禪師に身を隨へ給ふ時、此家 |
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を臥所にせしかバ、芭蕉翁の書跡 |
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樓をせばむ。 |
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五世 |
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恙なく實をもつ芥子のひとへ哉 | 松江 |
葛齋坊の記念の松外山に殘る。 |
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蓬莱も世界のうちや花菫 | 由之 |
火桶抱けば柏の風もよいものぞ | 里石 |
礒の松浪こゆるかやきじの聲 | もと女 |
下總は小松の中よけふの月 | 北二 |
秩父路にて |
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この筋やきぬにくるまれ蟋蟀 | 兄直 |
葛飾の浦 |
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碁にまけてさがし出しけり初霞 | 雙樹 |
鶯にすゝめられたる草履かな | 月船 |
椿の海 |
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山清水釣がね草のあわたゞし | さ彦 |
成田山 |
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四條の納涼 |
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加茂川につゝかけたりや心天 | 素迪 |
素麺(さうめん)の細きはしより天の川 | 至長 |
千葉野 |
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萬歳や道で逢ふても春のもの | 雨塘 |
椿が丘にめぐり逢て |
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正月の羅漢さびしや松の霜 | 對竹 |
亡人 |
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酒のまぬ日はなけれども神無月 | 恒丸 |
あすしらぬ命をはからで、ねがはしきことの |
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ひとつふたつ、松嶋は先我戀の玉の緒なり。 |
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投込で見たき家なり笹粽 | 乙二 |
魚鳥の年もよるかよ十三夜 | 雄淵 |
加茂の水もて來てひやせ粽五把 | 巣居 |
雀等よ春にしたい歟梅の花 | 大呂 |
男氣になりても梅のしづか也 | きよ女 |
烏さへ鳴ず人めも枯がしは | 雨考 |
秋の日の細きにならへ柿なます | 平角 |
白露やよき匂ひする山の中 | 素郷 |
鹿の尾に短夜の月かゝりけり | 長翠 |
撫子や雨のやどりの鳥が來る | 祥禾 |