芭蕉の句


草臥て宿かる比や藤の花

出典は『笈の小文』

貞亨5年(1688年)4月11日、大和八木で詠まれた句。

 旅の具多きは道ざはりなりと、物皆払捨たれども、夜の料にと、かみこ壱つ、合羽やうの物、硯、筆、かみ、薬等、昼餉なんど物に包て、後に背負たれば、いとヾすねよはく、力なき身の跡ざまにひかふるやうにて、道猶すゝまず、たヾ物うき事のみ多し。

草臥て宿かる比や藤の花


 『古今和歌集』に素性法師の「いそのかみふるき都の時鳥声ばかりこそ昔なりけれ」がある。

初案は「ほとゝぎす宿かる比の藤の花」。

猿雖宛書簡(貞亨5年4月25日)に「時鳥宿かる頃の」とある。

丹波市、やぎと云所、耳なし山の東に泊る。

時鳥宿かる頃の藤の花

と云ひて、なほおぼつかなきたそがれに哀れなるむまやに至る。

 『三冊子』(土芳著)に此句、始は「ほとゝぎすやどかる比や」と有。後直る也。とある。

丹波市で詠まれたという説もある。

大和行脚のときにたむは市とかやいふ處にて日の暮かゝりけるを藤の覺束なく咲こほれけるを

草臥て宿かるころや藤の花


岩手県平泉町の中尊寺

秋田県横手市の羽州街道

栃木県壬生町の道路沿い、足利市の浅間神社

群馬県渋川市の伊香保グランドホテル、藤岡市高山の旧家

埼玉県深谷市の妙光寺、秩父市の秩父甲州往還道

神奈川県藤沢市の白旗神社

静岡県浜松市の庚申堂

山梨県甲州市の立正寺、大月市猿橋町

長野県長野市の大塚地蔵尊、伊那市の富島鉄工所

新潟県柏崎市の椎谷観音堂米山SA(上り)

岐阜県各務原市の桃春院、大垣市の法泉寺

愛知県津島市の瑞泉寺

三重県伊賀市の「ふじ旅館」

奈良県天理市の八坂権現、橿原市の八木地区公民館に句碑がある。

羽州街道の句碑



壬生町の句碑
   
浅間神社の句碑

   


白旗神社の句碑
   
庚申堂の句碑
   
猿橋町の句碑

   

   


法泉寺の句碑



 『はせをつか』(楓幻亜編)に「翁 冢 同所下 大芝ゝ 草臥て宿かるころや藤の花」とあるが、現存しない。

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