蕉門十哲のひとり宝井其角(1661〜1707)は俳諧の巨匠として芭蕉没後派手な句風で、洒落風を起こし、その一派は江戸座と呼ばれた。「虚栗」、「花摘」、「枯尾花」など句集を遺した。 |
神無月の初、空定めなきけしき、身は風葉の行末なき心地して、 |
旅人と我名よばれん 初しぐれ 又山茶花を宿々にして |
岩城の住、長太郎と云もの、此脇を付て其角亭におゐて関送リせんともてなす。 |
茅場町薬師堂の辺(あたり)なりと云ひ伝ふ。元禄の末ここに住す。即ち終焉の地なり。 |
按ずるに、「梅の香や隣は荻生惣右衛門」といふ句は、其角翁のすさびなる由、普(あまね)く人口に膾炙す。依つてその可否はしらずといへども、こゝに注してその居宅の間近きをしるの一助たらしむるのみ。 |
『江戸名所図会』(俳仙宝晉斎其角翁の宿) |
廿九日 雨 其角百年忌 春の風草にも酒を呑すべし
『文化句帖』(文化3年2月) |
十五から酒をのみ出てけふの月 |
八日 晴 松井と灌仏参 藤棚もけふに逢けり花御堂
『文化句帖』(文化5年4月) |