芭蕉の句


文月や六日も常の夜には似ず

出典は『奥の細道』。

 酒田の余波日を重て、北陸道の雲に望、遥々のおもひ胸をいたましめて加賀の府まで百卅里と聞。鼠の関をこゆれば、越後の地に歩行を改て、越中の国一ぶりの関に到る。此間九日、暑湿の労に神をなやまし、病おこりて事をしるさず。

 元禄2年(1689年)7月6日(陽暦8月20日)、芭蕉は柏崎から直江津にやって来た。

 六日 雨晴。鉢崎ヲ昼時、黒井ヨリスグニ濱ヲ通テ、今町へ渡ス。聴信寺ヘ彌三状届。忌中ノ由ニテ強而不止、出。石井善次良聞テ人ヲ走ス。不帰。及再三、折節雨降出ル故、幸ト帰ル。宿、古川市左衛門方ヲ云付ル。夜ニ至テ各來ル。發句有。

『曽良随行日記』

「今町」は直江津。この時の「發句」が「文月や六日も常の夜には似ず」である。

   直江津にて

文月や六日も常の夜には似ず
   ばせを

 露をのせたる桐の一葉
   左栗

朝霧に食(めし)たく烟立分て
   曽良

 蜑の小舟のはせ上る磯
   眠鴎

烏啼むかふに山を見せりけり
   此竹

 松の木間より続く供鑓
   布嚢


左栗は石塚喜右衛門。

この句は『猿蓑』『陸奥鵆』にも収録されている。

『泊船集』には「文月の」とある。

文月の六日ハ常の夜にも似す

文月や六日も常の夜にハ似す


群馬県前橋市の観音堂

新潟県村上市の石船神社、上越市の琴平神社に新旧2基、北城神明宮

 十日町市の新保広大寺

福岡県福津市の宗像神社に句碑がある。

観音堂の句碑



石船神社の句碑



琴平神社の句碑
   
新保広大寺の句碑

   


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