除 風



『青莚』(除風編)

 元禄13年(1700年)8月、『青莚』(除風編)刊。浪花誹諧長者槐之道諷竹序。

除風は真言宗の僧侶。当時、倉敷の南瓜庵に住んでいた。

誹諧青筵巻之上

  丈艸
引よせて放し兼たる柳かな

 幕もひらめく船のはる風
   除風

殘雪をさへかへらせぬ鳥啼て
   支考

 山のてへんに庵の腰かけ
   露堂



 春之部

不二を見ぬ哥人もあらん花の山
   嵐雪

花あれは市の中にも鳥の聲
   諷竹

ひそやかにものいふてゐる花見かな
   風國

   長崎にて

海を見た目つきも出す花の空
   去來

花咲と親をもたねは力なし
   除風
  鶴岡
折たくはをれとや花の咲みたれ
   重行

段々に何梅角梅はつさくら
   諷竹

   けふ見るはなにわらはへをもてはやして

ことつかる菓子の封切櫻かな
  その女
 備中宮内
しら雲に崩れて咲ぬ山櫻
   高吉
 肥後熊本
むめのはな隣は鍛冶の一重壁
   仕帆

おたしさや梅のすはへのかけ法師
   正秀

   む月廿日あまりふかゝはの舊庵に入てこゝかしこ
   なつかしき事のみなれは

鶯のなけは今朝猶おきられす
   惟然

   小庵のうしろの垣にとし比馴きたれる鶯の夫婦有
   ことしはいかにしたりけんやもめになりて侍ける
   をとふらひて

鶯をなふらせはせしむら雀
   嵐雪

たのしさよ闇のあけくの朧月
   去來

   あまかさきよりふねにのりて

哥もなきくはゐ角組堀江かな
   許六
  尾州
縁遠き雛や節句の店守り
   露川

一錦過して藤の都かな
   支考

   雜之句

網立て網かうほさの雨夜かな
   キ角

 夏之部

ほとゝきす庭をあかれは縁はしら
   北枝

卯の花も海のかさりや淺間山
   去來

   大井河ちかき島田の宿にたゝよひあそふ僧の侍
   りけるよの中を用なきものに思とりて余所へ行く
   にも戸を打明て出ありきける一日留守のほとうか
   ゝひ入て晝寐し歸りて申遣しける

やすき瀬を人におしへよ杜若
   嵐雪

   千本通をよつ塚のほとりへ行とて

嶋原の外にも染るや藍畠
   嵐雪

   浪花より船にのりて明石にわたる乘合あまたにて

みしか夜を皆風呂敷に鼾かな
   除風

   除風行脚のはなむけにふろしきをくるとて

芝に寐は此風呂敷や枕蚊屋
   嵐雪

   備中日闇山といふところにて

とこやらに似たる木立よ蝉の声
   助叟

   除風庵にあそひて

冷汁の草を見立る庵かな
   助叟

凉しさに寐よとや岩の窪溜
   丈艸

   表六韻
  李由
芍藥と牡丹の間やけしの花

 あさ夕袷晝はかたひら
   千那

したひから顔の黒いに旅馴て
   吾仲

 酒はもとより餅上戸也
   呂物

名月も夜半過れは氣か變り
   范孚

 小屋建ならふうらのあき風
   除風



鎌倉を生て出けむ初鰹
  芭蕉翁

おもしろうてやかてかなしきうふねかな

頓て死ぬけしきも見えす蝉の声

   此三唱は世に聞ふれたる句に侍れときくたびこと
   になみたのもよほされけれは又見る人の教戒とも
   ならんかし

   備中國吉備津宮奉納 十七句

山もやま中やとりせよ時鳥
   宗祇

神さひて秋はとこらそまかね山
  三千風
  社司
六月を余所にそそよく鈴の檀
   高吉

みあかしもこほりて寒し鳩の声
   路通

月雪に山の古ひや宮はしら
   露堂

   ひせひちうの兩宮を拜して

短夜やとなたの月にほとゝきす
   支考

中山やしけりたふとし陰陽
   助叟

秋風や鬼とりひしく吉備の山
   去來

子規爰か願ひのまかねやま
   除風

誹諧青筵巻之下

  嵐雪
名月は家隆のゆるす朧かな

 稲光よりすくにいなつま
   除風



   北にたゝよひ南になかれて東城の水のこゝろはせ
   を嵐雪か風呂敷につゝまれたりこれそ松嶋きさか
   たの風雅の首途にして一巾に腰をおされ一杖に手
   をひかれ行

あてもなくなかれわたりや秋の雲
   除風

   白 川

あき風をちからに鳴や朝からす

   仙 臺

山かけて取ひろけたる月夜かな

   松しま

嶋々に秋のわたるや遠目かね

   日光を立日は雨そほふる菰といふものをかふりた
   れは僧都の事ともおもひ出られて

みのむしに似て面白し秋の雨

   僧除風行脚の歸りをまちうけはへりて

秋風をふるふて見せよ墨ころも
   嵐雪

   尾花散しくふるさともなつかしく武城の別に及ふ

おはれても跡ふりむきぬ秋の鹿
   除風

   鎌 倉

夕くれの鷺のみたれやむら尾花

   江 嶋

夕露のいかさまさむし弁財天

   此ところよりおそろしきねつといふものにおかさ
   れ侍りけるに友とせる法師のかひかひしくかきい
   たきて下るとおもひ侍りしのちは夢にや有けんな
   に事もわかたす人めもかるゝころからから備のお
   かやまにいたる雨をしのき風にまとひし寐むしろ
   にいとまとらするとて

寐むしろをふるふ花野のにほひかな

 秋之部

名月や雨にはり合風光
   丈艸

名月に氣を持顔の鵆かな
   正秀

   病 後

しみしみと立て見にけりけふの月
   佛兄

笠きせて見はや月夜の鶏頭花
   支考

   園木の宿にて小姫のまたらふしうたふをきゝて

月かけに裾を染たよ浦の秋
   去來

   備中國惣社明神にまうつ

拍手のひゝきや月の前うしろ
   除風

蚊遣火に團當けり秋の風
   許六

   垣ねのいはら袂を引はそこにその日はくらしち
   またの芝生に尻を居てふた夜三夜とあかすい都
   の屋の棟を多くかそへて

洛外の辻堂いくつあきの風
   嵐雪

   倉敷妙見宮奉納

神垣やふるき木ともに秋の色
   除風

丸腰の治郎笠ぬけ星むかへ
   キ角

七夕は降とおもふかうき世かな
   嵐雪

をくり火に殘りて月のひとり哉
  高よし

雷も戀しき二百十日かな
   正秀

寐かへりの方になしむやきりきりす
   丈艸

また夏の心ならひや葉けいとう
   嵐雪

   いつくしまにて

鹿の音の呼出す杉のあらしかな
   凉菟

梟の來ぬ夜も長し猿の声
   北枝

滿汐の岩ほに立や鹿の声
   去來

   長月末つくしよりのほりける道あきのひろしまを
   通けるに人々とゝめられけれとも故郷に心いそき
   せられてのかれ出るあかつき一夜の宿にかきとゝ
   め侍る

けふ翌となりていそかしわたり鳥
   去來

   宿三井寺

ひやひやとまくらに寒し鐘の声
   除風
  除風
雷の鳴夜はいかに寐るこりきりす

 殘りおしきか月のもてなし
   正秀


  諷竹
稲妻にいよいよ暗しおもふ筋

 七日八日の月の松原
   除風



 冬之部

馬の尾に雪の花ちる山路かな
   支考

初雪や河豚て死たる人の塚
   許六

   ひかしやまをみて

山の端の雪あはれ也大文字
   嵐雪

初雪を合羽に出立おとこかな
   白雪

   草津よりふねにのりて

とり楫の答過たり日枝の雪
   除風

山畑に青み殘して冬かまへ
   去來

ふりふりてあはれはつゝくしくれかな
   野坡

   備後の一ノ宮に詣けるとて井原を過る

しくれけり宿のはつれの枯薄
   除風

血のつきし鼻帋さむき枯野哉
   許六

菰こしに笛の聞ゆるかれ野かな
   李由

   すみよしにまうてゝ神慮を仰き奉る

こからしや譲り合て海の汐
  その女

水底の岩に落つく木の葉哉
   丈艸

   あさまやまにて

海原や一際こほる鷹の声
   除風

柿の葉につれつれ當る霰かな
   卯七

餅つくに鶯も來よ梅なかし
   智月

大家はくしらに似たりとしのくれ
   嵐雪

   長崎のうらに旅ねせし年

とし浪のくゝりて行や足のした
   去來

   旅 舘

走まふ人にまきれよとしのくれ
   野坡
  正秀
たふとさや息つく坂の初しくれ

 風にふきちる麥まきの哥
   除風



  除風子の撰集をいわゐほ句まいらせんとおもふに
  青むしろはことしのわらをもつてをり出さるもの
  なりと人の申けれはかならす冬季なるへしとさた
  しはへりて
去來稿
草庵に一のたからや青莚

元禄庚辰南呂の日浪花の旅亭におゐて校考

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