芭蕉の句碑『奥の細道』


鶴鳴くやその声に芭蕉破れぬべし

「芭蕉の館」入り口から坂道を上り、「芭蕉の館」に向かう。

途中に句碑があった。


鶴鳴くやその声に芭蕉破れぬべし

この句も『奥の細道』には出てこない。

   ばせをに鶴絵がけるに

鶴鳴や其声に芭蕉やれぬべし   翁

鮎の子の何を行衛にのぼり船


 『風羅袖日記』は「延宝天和年中」、俳諧一葉集』では「寛文延寶天和年中」の句とする。

      画賛

   鶴なくや其声に芭蕉破ぬべし

一書に鶴の声は至てやさしくゆふなものなれども、芭蕉はいたつてやはらかにて是ほどやぶれやすきものもなければ、かのやさしき鶴の声にさへやぶれむとなり。

『芭蕉翁句解参考』(月院社何丸)

 「芭蕉のほとりに鶴が描かれてある。この鶴はめったに鳴くことがない。しかし一度鳴くとその声に天下振動すといわれているのであるから、この芭蕉の美しく整った葉も一挙に破れ去ってしまうにちがいない」という意。

 眼前の絵をみつめているうちに、おのずから気力充溢して奔放な想像をめぐらしたという趣がある。

 「鶴鳴くや」は、『墨子』の「鶴雖時夜而鳴、天下振動」ということばや、俗に「鶴の一声」などといわれることばを心に置いていよう。「鶴唳」の語は、鶴の鳴声の凄鋭、清明であることをいう語で、この句でも鶴の声をそういうものとしてとらえて発想している。芭蕉と蔓とをとりあわせた画題に対して、前者の「風雨に破れ易きを愛するのみ」と、後年「芭蕉を移す詞」の中で述べたごとき風情と、後者の高貴な品格とを、共に生かして一句にまとめたものである。『野ざらし紀行』の「梅白し昨日や鶴を盗まれし」という挨拶吟の発想なども参考になろう。

 『曾良書留』に光明寺での作の後に、「サン(賛)」と頭書し、「翁」作として掲出。『雪丸げ』『芭蕉翁句解参考』(両書「鶴の賛」と前書)には中七「其声芭蕉」とあり、曾良の作とするが、『曾良書留』の記載に従うべきものであろう。『書留』の記載順序より見て、黒羽での作。したがって、四月十日から十五日ごろまでの間。『奥細道拾遺』(「鶴の絵賛」と前書)は『雪丸げ』の形で芭蕉作として収める。


かさねとは八重撫子の名成べし 曾良」の文学碑へ。

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