俳 書
『芭蕉句鑑』(松宇文庫)@ ・ A
『風羅袖日記』(素綾編)に倣って年次別編集しているが、誤りも多い。
天保の頃成立。
いぬと申世の中よかれ酉の年
遁世
雲とへたつ友かや鴈の生別れ
辛崎の夜雨 年号不知
琵琶の湖雨よ疎顔か松の律
粟津晴嵐
さそ野分人の淡たつ市の声
矢橋帰帆
夕霞赤石の浦を帆のおもて
比良暮雪
さそへ雲白衣の天狗比良の雪
石山秋月
汐やかね顔磨よ此湖秋の月
瀬田夕照
遅き日にかわかぬ網の左リ袖
堅田落鴈
鳥の文かた野々鴈よ片便宜
三井晩鐘
盃に片破ハなし花の鐘
こゝのとせの春秋を市中に住侘て居を深川のほとりに移す長安は古来名利の地空手(くうしゅ)にして金無ものは行路かたしといひけん人のかしこく覚へ侍るハ此身のとぼしき故にや