ぶんぶく茶釜
巌谷小波作
ブンブクブンブク音がする 夜なかに何だか音がする 屑やもむくむく起きだして のぞいて見たらおどろいた 見れば狸にちがいない さては化けたなこいつめと うとうとしたらこれ待った わたしやわるさはいたしません かわりにいろんな芸をして お目にかけますこの通り たたく尾太鼓腹つづみ 屑やもかんしんするばかり 今もなだかい茂林寺の 文福茶釜のおはなしは だれも知らないものはない だれも知らないものはない
童話の一章より |
午後三時、花の山を去つて、茂林寺に向ふ。岐路毎に木標ありて、露迷はず。二十五町にして達す。境内凡そ一万坪、杉の林を帯びて、見事なる大伽藍也。本堂の前の左手に、守鶴和尚の堂あり。銅仏あり。山門に鐘懸り、偉大なる榧立枯れして、まつはる藤の花、半天より咲き垂る。
「館林の躑躅」 |
館林茂林寺にて つゝじ時縁起坊主も雇はれて |