芭蕉の句


さまざまのこと思ひ出す櫻哉

出典は『笈の小文』

 伊賀の國阿波の庄といふ所に、俊乗上人の旧跡有。護峰山新大仏寺とかや云、名ばかりは千歳の形見となりて、伽藍は破れて礎を残し、坊舎は絶えて田畑と名の替り、丈六の尊像は苔の緑に埋て、御ぐしのみ現前とおがまれさせ給ふに、聖人の御影はいまだ全おはしまし侍るぞ、其代の名残うたがふ所なく、泪こぼるゝ計也。石の連(蓮)台・獅子の座などは、蓬・葎の上に堆ク、双林の枯たる跡も、まのあたりにこそ覺えられけれ。

丈六にかげろふ高し石の上

さまざまのこと思ひ出す櫻哉


貞享5年(1688年)、藤堂家の句会に招かれて詠まれた句。

おなじ年の春にや侍らむ。故主君蝉吟公の庭前にて

さまざまの事おもひ出す桜かな
   芭蕉


蝉吟公は侍大将藤堂新七郎の家嫡良忠。

探丸子別墅の花見催ほし給ひけるに、まかり給ひて、

      様々のこと思ひ出す櫻かな

愚按、良長成人の後、別號を探丸といふ。蕉翁が宗房たりし時の忠節をおぼし出で、初めて對面ありし時とぞ。この句に探丸の脇の句あり。春の日早く筆にくれゆく云々。翁の執筆にて一坐あり。其の筆のあと今に傳はれりとぞ。


探丸子は藤堂良忠の嗣子良長の俳号。

藤探丸子(蝉吟子嗣子良長)のもとにて、

      さまさまの事おもひ出すさくら哉

          春の日はやく筆に暮ゆく   探丸子


茨城県龍ヶ崎市の松葉小学校

埼玉県羽生市の円照寺

東京都八王子市の八幡神社

新潟県新潟市の三柱神社

福井県敦賀市の敦賀気比高校

愛知県岡崎市の甲山中学校

三重県伊賀市の上野公園

兵庫県高砂市の播州山頭火句碑の園、南あわじ市の賀集八幡宮

岡山県岡山市の路上普門院

愛媛県松山市の阿沼美神社に句碑がある。

円照寺の句碑
   
八幡神社の句碑

   


上野公園の句碑



播州山頭火句碑の園の句碑



賀集八幡宮の句碑



阿沼美神社の句碑



埼玉県熊谷市の常光院にオモテ6句「桜かな」の巻の連句碑がある。



埼玉県北本市荒井の民家に「いろいろのこと思ひ出す櫻哉」の句碑がある。



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