芭蕉の句


升買て分別かはる月見かな

出典は『住吉物語』(青流編)。

 元禄7年(1694年)9月9日、故郷の上野から奈良を経て大阪に入り、13日に住吉の宝の市で名物の升を買っている。その翌日の句席で挨拶の発句。

水田正秀に宛てた書簡(9月25日付)にある。

   十三日は住よしの市に詣でゝ

枡かふて分別替る月見哉

 壱合斗(升)一つ買申候間かく申候。

 句意は「市で名物の升を買ったら思いが替わって句会に出ず帰ってしまった。申し訳ないことをした。」だが、真意は芭蕉自身の体調がすぐれなかったのです。これを「升を買ったため」と詫びたところに俳諧のユーモア性があります。

三重県伊賀市
芭蕉翁顕彰会

今宵は十三夜の月をかけて、すみよしの市に詣けるに、昼のほどより雨ふりて、吟行しづかならず。殊に暮々は悪寒になやみ申されしが、その日もわづらはしとて、かいくれ帰りける也。次の夜はいと心地よしとて、畦止亭に行て、前夜の月の名残をつぐなふ。住吉の市に立てといへる前書ありて

(枡)買て分別かはる月見かな
   翁

『笈日記』(支考編)

升買て分別替る月見哉

此句九月十三日住よしの市に詣ての吟也。次の夜畦止亭にて、住吉の市に立てといへる前書あり、と笈日記に書り。


   升買て分別替る月見かな

荘子「斗斛成而天下人始争」これらにかなへり。升買てハものはかる事を思ひ、隠士の分別」のかハり所もかゝる所より出へしとそ。誠に句情尊へし


福島県二本松市の住吉神社

三重県伊賀市の伊賀市役所

大阪府大阪市の住吉公園に句碑がある。

住吉神社の句碑



住吉公園の句碑



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