稲津祇空

『住吉物語』(青流編)


元禄8年(1695年)、『住吉物語』(青流編)。

青流は祇空の初号。祇空の処女選集。

 住吉物語 上

芋は芋はまつ月をうるゆふへ哉
   宗因

雲おりおり人やすまする月見哉
   芭蕉

   はしめてさかいに入し年の

名月や沖て直のたつ浦の鯛
   青流

   萬里氣尤清
  大坂
名月や旅せぬ人も打ましり
   その女

   寄蕣賀
  江戸
あさかほの星と一度にめてたけれ
   素堂
  大津尼
あさかほの花にみとれて昼寝哉
   智月
  大坂
なり平を誰見とかめてすゝき哉
   洒堂
  大坂
町内の新酒ひろめや口ふさき
   之道
  
唖の子の物いひ出る花野かま
   渭川
  膳所
唐網に袖ぬれてきく鶉哉
   正秀
  
とをのいて詠すへたる紅葉哉
   助叟

琴箱や古物棚の背戸の菊
   芭蕉

   住吉の市に立てそのもとり長谷川
   畦止亭におのおの月を見侍るに

 芭蕉
升買て分別かはる月見かな

秋のあらしに魚荷つれたつ
   畦止

家のある野は苅あとに花咲て
   惟然

いつもの癖にこのむ中服
   洒堂

頃日となりて土用をくらしかね
   支考

榎の木の枝をおろし過たり
   之道

溝川につけをく筌を引てみる
   青流


  江戸
一葉落いくらもおちて月夜哉
   嵐雪

   旅 懐

この秋は何て年よる雲に鳥
   芭蕉
   九月尽

長月を懸かねさしに別かな   その女

   冬

笠とれは六十皃の時雨かな   その女

夜はしりの舟は沖のる時雨哉   青流

近江路を阿闍梨につるゝ時雨哉
   渭川
  膳所
馬しかる聲も枯野ゝ嵐かな   曲翠

いそかしや脚もやすめぬ冬の雲   その女
  江戸
炭やきや朧の清水鼻をみる   其角

   すみよしにまふてゝ

祢宜たちや火鉢ひとつをとり廻し   青流

   冬の竹  三句

木からしは竹にかくれてしつまりぬ   芭蕉

こからしや竹もよなみを吹てゆく   之道

木枯やふかれて竹のゆり違へ   青流

   青流子のやとりに人々をいさなひて

笠はみな脱てかさなる濱千鳥
   渭川
  伊賀
用のある耳出してをく頭巾哉   土芳

   芭蕉翁たまたまなにはの芦の花みん
   とてきく月にくたりたまふにおもはす
   も夢とのみ浮雲むなしくはかなきなら
   ひなり一日吟席のゝちは余も病床に
   ふし侍りしに之道かもとよりかくとしら
   せたり胸つふれ筆とるまもなくて

是は扨只きゝわたる冬の鳫
   青流

   追 悼

  翁の句のはしをおもひとりて

なてしこの花もやつるゝ火桶哉
   同

   嵐雪新宅

水瓶や庭かたまらぬ冬つはき
   洒堂
   冬

笠とれは六十皃の時雨かな   その女

夜はしりの舟は沖のる時雨哉   青流

近江路を阿闍梨につるゝ時雨哉
   渭川
  膳所
馬しかる聲も枯野ゝ嵐かな   曲翠

いそかしや脚もやすめぬ冬の雲   その女
  江戸
炭やきや朧の清水鼻をみる   其角

   すみよしにまふてゝ

祢宜たちや火鉢ひとつをとり廻し   青流

   冬の竹  三句

木からしは竹にかくれてしつまりぬ   芭蕉

こからしや竹もよなみを吹てゆく   之道

木枯やふかれて竹のゆり違へ   青流

   青流子のやとりに人々をいさなひて

笠はみな脱てかさなる濱千鳥
   渭川
  伊賀
用のある耳出してをく頭巾哉   土芳

   芭蕉翁たまたまなにはの芦の花みん
   とてきく月にくたりたまふにおもはす
   も夢とのみ浮雲むなしくはかなきなら
   ひなり一日吟席のゝちは余も病床に
   ふし侍りしに之道かもとよりかくとしら
   せたり胸つふれ筆とるまもなくて

是は扨只きゝわたる冬の鳫
   青流

   追 悼

  翁の句のはしをおもひとりて

なてしこの花もやつるゝ火桶哉
   同

   嵐雪新宅

水瓶や庭かたまらぬ冬つはき
   洒堂

 住吉物語 下

みとり子を頭巾てたかん花の春
   その女
  江戸
霄年と立や鵜の本鷺の本
   調和

   閑居に春をむかへて

梅折にあるきまはつて御慶哉
   青流

   早 春

森一つ背中にさむき若菜哉
   洒堂
  イタミ
月はなく昼はかすむや昆陽の池
   鬼貫

鶯や梅に小首をかたけぬる
   之道

   竹内一枝軒にて

世にゝほへ梅花一枝のみそさゝい
   芭蕉

  芭蕉翁百ケ日
  イカ
わすれてはならぬ歎や月と梅
   土芳
  イセ
山鳥の樵を化す雲間かな
   支考

  竹の内に越てよしのにまふするとて三句

春雨にけふも坂での思案かな
   渭川

春雨やされとも笠に花すみれ
   その女

鼻紙の間にしほるゝすみれかな
   同

   別之道
  ヒコ子
紬着る人見おくるや木瓜の花
   許六

   よし野にて
  伏見
山伏の袈裟にかけてや峯の花
   任口

   青流子をとひて鴫立澤のことなと
   かたらひて
  仙臺
我鴫の聟君にせん時鳥
   三千風

   いせにて

卯花に伊勢の匂ひのけはひ哉
   洒堂

   人々余かすみところに
   茅菴をしつらへ給ふに
  
昼寢してみせはや菴の若葉風
   丈艸

山おくのなをなつかしき若葉かな
   渭川

竹の子や五つもらふて客ひとり
   青流

竹のこに小坂の土の崩れけり
   その女

朝起の顔ふきさます青田哉
   惟然

   清流子をたつねまかりけるに
   途 中 吟

家々や干瓢むいて浦の風
   惟然
  江戸
花あやめ誹言あらむ藪菖蒲
   一晶
  エツ中
二三日蚊屋のにほひや五月闇
   浪化
  
簫吹人留守とはかほる蓮かな
   西鶴

雲に雲おほひ重るあつさかな
   之道

夕顔を無理にまけたる垣ねかな
   路通

すゝしさを繪にうつしけり嵯峨の竹
   芭蕉
  亡人
年寄をまいてのけけたるすゝみかな
   畦止

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