鈴木清風

『稲莚』(清風編)


清風は本名鈴木八右衛門、紅花商人で知られる。

貞享2年(1685年)、刊。

芭蕉の句は収録されていない。


  江戸
松明ぬ陸(ママ)月の新樹門の秋
   露沾

  江戸
匂ふらん江戸のよし野の朝霞
   不卜

曙のよし原みする霞かな
   其角

  酒田
蓋とるや乾坤万物の初雑煮
   不玉
羽州大石田
若水や竜の都も千尋繩
   一榮

   常陸帯祭

 須加川
桜子の迷ふや常陸帯祭
   等躬

 奥州白川
覆かれて角くむ筆の蘆辺哉
   何云

   筑前沖の濱にて

鱠網に有リ防風(ホウフ)しらずや沖ノ濱
   言水

  若和布

    筑前かねか崎にいは浪のおかしきを

浪着せて若和布帯せり岩姿
   言水
  加州
薪にやからん鳴ぬ卯花夜も明は
   北枝
 加州金沢
笠着せて姿聞たし時鳥
   一笑
  仙臺
たはこふかはくもりもやせん時鳥
   三千風

   鳴滝穐風子亭にて

蚊を鳴て曝布萌黄にそむ夜哉
   言水
 加州金沢
楽よ馬も蝉きく木陰哉
   万子

浮葉巻葉此風情過たらん
   素堂

   長崎に入て

草枕豕猪(フタ)に夏なし痩法師
   言水

  秋 扇

    肥後の国加藤清正の廟に詣て

爰に秋あつて朝鮮扇破けり
   言水

野田ト云墓所ニ而
加州帶藤軒
あハれみる野田ハ卒塔婆のむら尾花
   牧童

   象潟蚶満寺

經音荻に有をのれ角折磯栄螺
   言水

   象潟にて

月ハ蚶潟や下戸ハ見のがす芦間蟹
   言水

    肥後の國白川の邊に旧跡をたつねて

月や耻ぬ檜垣の女浴(ユアミ)
   言水
 肥後熊本
此雪にこそよし野山賤木割をとげ
   水翁

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