千代尼
『千代尼句集』(既白編)
宝暦14年(1764年)1月、藤松因序。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||
宝暦14年(1764年)6月2日、明和に改元。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||
明和元年(1764年)10月、半化闌更跋。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||
明和元年(1764年)、『千代尼句集』(既白編)刊。 |
対二加陽千代女一 |
||
麦林 |
||
国の名の笠に芳ばし花の雪 |
||
とを(ほ)き日影も水ぬるむころ | 千代 |
|
千代女の許にやどりて |
||
おしむなよ芙蓉の陰の雨舎り | 蓮二 |
|
もとよしの道すがら、千代女とつ |
||
れだちて。 |
||
紅茸や老人茸も杖の友 | 廬元坊 |
|
千代女の許にて |
||
凉風の配りや萩の亭主ぶり |
||
千代女の許にて |
||
暮柳舎 |
||
鬢水の手染もはやし庭の蔦 | 希因 |
千代尼句集 乾 歳 旦 福わらや塵さへ今朝のうつくしき よき事の目にもあまるや花の春 鶴のあそび雲井にかなふ初日哉 梅か香や鳥は寐させてよもすがら 仇を恩にて報ずるといふ事を 手折らるゝ人に薫るや梅花 追 悼 梅ちるやまつのゆふ辺も秋の声 梅花仏手向 なごりなごり散までは見ず梅の花 梅がゝや朝々氷る花の陰 鴬や声からすとも富士の雪 手折らるゝ花から見ては柳かな 吹々(ふきふけ)ど花に欲なし鳳巾 見て戻る人には逢ず初桜 女子どし押てのぼるや山ざくら 雲 雀 ふたつみつ夜に入そうな雲雀哉 祖師五百年御忌法会 地も雲に染らぬはなきすみれ哉 駈(かけ)出る駒も足嗅ぐすみれ哉 諫鼓鳥 淋しさは聞人にこそかんこどり 分入ば風さへきえて諫鼓鳥 笋 若竹 竹の子やその日のうちにひとり立 百 合 姫ゆりやあかるい事をあちら向 ゆふがほや物のかくれてうつくしき 唐崎の昼は涼しき雫かな 八十の賀 百とせに最(もう)一眠り柳かな 桑名のわたしにて 見るうちにわすれて仕廻(しま)ふ柳哉 つれよりも跡へ跡へと田うへ(ゑ)かな 送 別 若くさや帰り路はその花にまつ 納 涼 松の葉もよみつくすほど涼けり 涼しさやはずかしいほど行きもどり 八十の賀 涼しさやことに八十路の松の声 白雨 越の日和山にて ゆふだちの道よりもなし日和山 山のすそ野ゝ裾むすぶ清水かな 近道によき事ふたつ清水哉 千代尼句集 坤 秋立やきのふのむかし有のまゝ 朝がほや起したものは花も見ず 牽牛子やをのが蔓かと蔦に咲 朝顔に釣瓶とられてもらひ水 いなづまの裾をぬらすや水の上 月見にも陰ほしがるや女子達 名月や眼に置ながら遠歩行(ありき) 十六夜 いざよひや今あそこにて見ゆる雁 はつ雁や山配れば野に足らず 三界唯心 百生(ひゃくなり)や蔓一すじの心より 朝々の露にもはげず菊の花 時 雨 降さしてまた幾所か初しぐれ 帰 花 みよし野やよ所の春ほど帰り華 尼になりし時 髪を結ふ手の隙明て巨(炬)燵哉 池の雪鴨やあそべと明て有 雪の有ものにきかすな松の声 五百回御忌 東御門跡へ上ル 葉も塵もひとつ台(うてな)や雪の花 煤 払 けふばかり背高からばや煤払 |