芭蕉の句
鞍つぼに小坊主乗るや大根ひき
出典は『炭俵』。
元禄6年(1693年)11月8日付曲翠宛書簡・荊口宛書簡にある。
元禄6年(1693年)10月、芭蕉50歳の句。
曲翠(曲水)宛
頃日漸寒に至り候而、少し云捨など申ちらし候。
鞍つぼに小坊主乗ルや大根挽キ
振売の雁哀也夷講
荊口宛
文鳥子元服之よし目出度存候。愈成長たるべく候。
千川子瘧(おこり)久々御煩、いまほどは御快然珍重存候。
頃日愚句
金屏の松の古さよ冬籠り
鞍つぼに小坊主乗るや大根ひき
寒菊や醴(あまざけ)造る窓の前
素堂菊宴
菊の香や庭に切たれ(る)沓の底
『陸奥鵆』には「鞍壺に小坊主のせて大根引」とある。
蘭国曰、「此句、いかなる処か面白き」。去来曰、「吾子今マ(ママ)解しがたからん。只、図してしらるべし。たとへば、花を図するに、奇山・幽谷・霊社・古寺・禁闕によらば、その図よからん。
よきがゆへ(ゑ)に古来おほし。如此の類は図の悪敷にはあらず。不珍なれば取はやさず。
又、図となして、かたちこのましからぬものあらん。此等、元より図あしとて用ひられず。今珍らしく雅ナル図アラバ、此を画となしてもよからん。句となしてもよからん。されば、大根引の傍に草はむ馬の首うちさげたらん、鞍坪(壷)に小坊主のちよつこりと乗りたる図あらば、古からんや、拙なからんや、察しらるべし」。国が兄何某、却て国より感驚ス。かれは俳諧をしらずといへども、画を能するゆへ(ゑ)也。図師尚景が子也。
鞍つほに小坊主のるや大根引
此句、師のいはく「のるや大根引」と小坊主のよく目に立つ処、句作ありとなり。
出水市立図書館の句碑
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