かのおほん時に、おほきみつのくらゐ、かきのもとの人まろなむ、哥のひじりなりける。これは、きみもひとも、身をあはせたりといふなるべし。秋のゆふべ、たつた河にながるゝもみぢをば、みかどのおほんめには、にしきと見たまひ、春のあした、よしの山のさくらは、人まろが心には、雲かとのみなむおぼえける。
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楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人の船待ちかねつ
唐崎苑湖岸緑地(滋賀県大津市)

近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古思ほゆ
大津宮(滋賀県大津市)
柿本朝臣人麻呂作歌

近江大津宮錦織遺跡(滋賀県大津市)

さゞなみの志賀の大わだよどむとも昔の人に亦も逢はめやも
市民文化会館(滋賀県大津市)

あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ
柿本神社(兵庫県明石市)

ともしびの明石大門に入らむ日や漕ぎ別れなむ家のあたりみず
月照寺(兵庫県明石市)

あまざかる夷(ひな)の長道(ながぢ)ゆ恋くれば明石の門(と)より大和島見ゆ

あらたへの藤江の浦にすずき釣る白水郎(あま)とか見らむ旅ゆく吾を

ともし火の明石大門に入らむ日や榜(こ)ぎ別れなむ家のあたり見ず
明石川左岸(兵庫県明石市)

妹が見し棟(あふち)の花は散りぬべしわが泣く涙いまだ干(ひ)なくに
夏の歳時記園(兵庫県明石市)
柿本人麻呂の歌
後見むと君が結べる磐代の小松がうれをまたも見むかも
夕されば秋風寒し我妹子が解き洗ひ衣行きて早着む
天飛ぶや雁を使に得てしかも奈良の都に言告げ遣らむ
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ものゝふのやそうぢ川のあじろ木にいさよふ浪のゆくへ(ゑ)しらずも
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