秋桜子句碑
『葛飾』
春 唐招提寺 なく雲雀松風立ちて落ちにけむ 三月堂 来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり 当麻寺 牡丹の芽当麻の塔の影とありぬ 再び唐招提寺 蟇ないて唐招提寺春いづこ 梨咲くと葛飾の野はとのぐも曇り 連翹や真間の里びと垣を結はず 連翹や手児奈が汲みしこの井筒 葛飾や桃の籬も水田べり 草餅や帝釈天へ茶屋櫛比(しつぴ) 夏 香取津の宮 月見草神の鳥居は草の中 鹿島大船津 二句 浦浪を見はるかすなり鯉のぼり 夏帽に糊光はてなくひらけたり 赤城山 二句 夜の峯に馬柵(ませ)の見ゆなりほとゝぎす 牧草の丈なすまゝにほとゝぎす 霧降瀧 二句 山の日にコスモス咲けり瀧見茶屋 あな幽かひぐらし鳴けり瀧の空 木曾上松 羽抜鶏駆けて山馬車軋り出づ 秋 水沼口 コスモスを離れし蝶に谿深し 啄木鳥にさめたる暁(あけ)の木精(こだま)かな 啄木鳥や落葉をいそく牧の木々 冬 柴漬(ふしずけ)や古利根今日の日を沈む 柴漬や里輪のけぶりいと遠く 柴漬や鮠(はや)の四五鱗出てあそぶ むさしのの空真青なる落葉かな 筑波山縁起 わだなかや鵜の鳥群るゝ島二つ 天霧らひ雄峰は立てり望の夜を 泉湧く女峰の萱の小春かな 国原や野火の走り火よもすから 蚕(こ)の宮居端山霞に立てり見ゆ 百済観音 春惜むおんすがたこそとこしなへ |