秋桜子句碑
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『葛飾』

水原秋桜子の第一句集。

昭和5年(1930年)4月、『葛飾』馬酔木発行所刊。

 春

   唐招提寺

なく雲雀松風立ちて落ちにけむ

   三月堂

来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり

   当麻寺

牡丹の芽当麻の塔の影とありぬ

   再び唐招提寺

蟇ないて唐招提寺春いづこ

梨咲くと葛飾の野はとのぐも曇り

連翹や真間の里びと垣を結はず

連翹や手児奈が汲みしこの井筒

葛飾や桃の籬も水田べり

草餅や帝釈天へ茶屋櫛比(しつぴ)

 夏

   香取津の宮

月見草神の鳥居は草の中

   鹿島大船津 二句

浦浪を見はるかすなり鯉のぼり

夏帽に糊光はてなくひらけたり

   赤城山 二句

夜の峯に馬柵(ませ)の見ゆなりほとゝぎす

牧草の丈なすまゝにほとゝぎす

   霧降瀧 二句

山の日にコスモス咲けり瀧見茶屋

あな幽かひぐらし鳴けり瀧の空

   木曾上松

羽抜鶏駆けて山馬車軋り出づ

 秋

   水沼口

コスモスを離れし蝶に谿深し

啄木鳥にさめたる暁(あけ)の木精(こだま)かな

啄木鳥や落葉をいそく牧の木々

 冬

柴漬(ふしずけ)や古利根今日の日を沈む

柴漬や里輪のけぶりいと遠く

柴漬や鮠(はや)の四五鱗出てあそぶ

むさしのの空真青なる落葉かな

   筑波山縁起

わだなかや鵜の鳥群るゝ島二つ

天霧らひ雄峰は立てり望の夜を

泉湧く女峰の萱の小春かな

国原や野火の走り火よもすから

(こ)の宮居端山霞に立てり見ゆ

   百済観音

春惜むおんすがたこそとこしなへ

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