私には私らしい、其中庵には其中庵らしいお正月が来た。 門松や輪飾はめんどうくさいので、裏の山からネコシダを五六本折つてきて壺に挿した、これで十分だ、歯朶を活けて、二年生きのびた新年を迎へたのは妙だつた。 お屠蘇は緑平老が、数の子は元寛坊が、そして餅は樹明君が送つてくれた。 いはゆるお正月気分で、敬治君といつしよに飲みあるいた、そして踊りつゞけた、それはシヤレでもなければヂヨウダンでもない、シンケンきはまるシンケイおどりであつた! 踊れ、踊れ、踊れる間は踊れ! 芝川さんが上海からくれた手紙はまことにうれしいものであつた。 ・お地蔵さまもお正月のお花 ・お正月のからすかあかあ 樹明君和して曰く かあかあからすがふたつ ・シダ活けて五十二の春を迎へた
『其中日記』(二) |