2023年岡 山

國神社〜永井荷風〜
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 昭和20年(1945年)6月30日、永井荷風は三門町の佐々木方に間借り、7月7日、武南功氏方に移る。

雨。三門町二ノ五七二佐々木方に間借りをなす。

晴。巖井三門町一ノ一八二六武南功氏方に移る。庭に天竺葵の花灼然たり。毎夜サイレン人の眠を妨ぐ。


岡山市北区三門中町に國神社がある。


國神社石段


國神社石段改築記念碑

國神社表参道の石段は、今から276年前の元禄15年の造営で、岡山市で最も由緒ある石段であります。近年来参拝者が斬増し、石段の狭隘を感ずるようになり、昭和47年、國神社奉賛会を結成し、石段改築計画を練りました。従来の石段の両側斯く50センチ拡幅することとし、氏子崇敬者より多大のご協力をいただき、昭和51年7月着工、同52年10月完工しました。附帯工事として拝殿表門排水溝等の修理も行い、秋祭の日に祭典を斎行しました。ここに記念のため石碑を建立し後世に伝えます。

随身門


石段は続く。

社 殿


貞観2年(860年)、創建。

延喜式内社である。

社殿の前から見下ろす。


昭和20年(1945年)7月9日、永井荷風は國神社を訪れている。

山麓に鳥居を立てたるところは三門町二丁目の道路にして人家櫛比す。社殿の前の平地に立てば岡山市の西端に延長する水田及び丘皐を望む。備中総社町に至る一條の鐵路田間を走る。又前方南の方に児島灣を囲む山脉を見る。風景佳ならざるに非ず。然れども余心甚樂しまず。白雲の行くを見て徒に旅愁の動くを覺ゆるのみ。こゝに於て余窃に思ふに山水も亦人物と同じく親しみ易きものと然らざるものとの別あるが如し。明石より淡路を望みし海門の風光は人をして恍惚たらしむるものありが今眼前に横はる岡山の山水は徒に寂寞の思をなさしむるのみ。一は故人に逢うて語るが如く一は路傍の人に対するが如し。


2023年岡 山