俳 書
『如行子』(如行編)
貞享4年(1687年)11月5日から12月5日まで、芭蕉の尾張遊歴中の連句を集めている。
貞享4年(1687年)、成立。
中村俊定文庫には『如行集』とある。
近藤如行は大垣藩士。通称源太夫。貞享元年(1684年)、入門。大垣最初の芭蕉の門人である。
鳴海寺島氏ボク言に飛鳥井亞相の御詠草のかゝり侍りし哥を和す、
京まではまだ半天や雪の雲
| はせを
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鵆しば啼此海の月
| ボク言
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小蛤ふめどたまらぬ袖ひぢて
| 寂照
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寐覺は松風のさと、呼續夜明けてから、笠寺は雪の
降る日
星崎の闇を見よとや鳴千鳥
| はせを
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翁なるみの宿まておはし侍るよし聞て、急ぎまかり
ける道にて
一里半行とおもはぬ冬野かな
| 桐葉
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參川の國いらこといふ所に、杜國といひし此道のすき人有、翁むかしよりむつまじくかたり給ひけるゆゑ、かの所たづね給ふ道すがら、霜月十日の夜よし田にて名古屋の越人を伴ひければ、
同十六日はせをもと見給ひし野仁を訪ひ、三河の國にうつります、ところは伊良虞崎白波の寄する渚近く、比は木枯の風雪をお(く)る冬の日ののあはれを、歸るさに聞て
燒飯やいらこの雪に崩けん
| | 寂照
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砂寒かりし我足のあと
| | はせを
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松をぬく力に君が子の日にして
| | 同
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いつか烏帽子の脱る春風
| | 越人
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眠るやら野馬あるかぬ暖かさ
| | 同
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曇りをかくす朧夜の月
| | 照
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又鳴海に歸り宿して
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置炭や更に旅(と)もおもはれす
| | 越人
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雪をもてなす夜すからの松
| | 寂照
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海士の子が鯨を知らす貝吹て
| | はせを
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背戸よりすぐに踏こはす頃
| | 人
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歌よまん此名月をたゞにやは
| | 照
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蕎麦の御調を通す關守
| | はせを
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同十七日翁を問來て
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幾落葉それ程袖も綻びず | なごや | 荷兮
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旅寐の霜を見するあかゞり
| | はせを
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今宵の月かゆる小荷駄に付遣りて
| | 照
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さとの躍に野菊折れける
| | 野水
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同二十日なるみ鍛冶出羽守饗(まうけ)に
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おもしろや雪にやならん冬の雨
| | はせを
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氷をたゝく田井の大鷺
| | 自笑
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舟繋ぐ岸の三股萩枯て
| | 寂照
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翁心ちあしくて欄木起倒子へ藥の(事)いひつか(は)すとて
薬のむさらでも霜の枕かな
| | はせを
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昔し忘れぬ草枯の宿
| | 起倒
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同じ月末の五日の日名古やの荷兮宅へ行たまひぬ。同二十六日岐阜の落梧といへる者、我宿をまねかん事を願ひて
凩のさむさかさねよ稲葉山
| | 落梧
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よき家續く雪の見ところ
| | はせを
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鵙の居る里の垣根に餌をさして
| | 荷兮
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黍の折れ合道ほそき也
| | 越人
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霜月二十九日附夏山公趣於尾陽熱田矣、於茲宿林氏桐葉子宅矣、臘月朔日芭蕉翁發名古屋到熱田、牛之時謁之
芭蕉老人京までのぼらんとして、熱田にしばしとゞまり侍るを訪ひて、我が名よばれんといひけん旅人の句をきゝ歌仙一折
旅人と我見はやさん笠の雪
| | 如行子
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盃寒く諷ひ候へ
| | はせを
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有明の鉢の木(賊)を刈初て
| | 桐葉
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露になりけり庭の砂原
| | 行
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筥根越す人も有らし今朝の雪
| | はせを
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船に燒火を入る松の葉
| | 聽雪
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五六十布網干せる家見えて
| | 如行
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拐むれつゝ葭の中ゆく
| | 野水
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明るまでもどらぬ月の酒の醉
| | 越人
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蔀々を揚る盆の夜
| | 荷兮
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是より人々の趣も有て出かちに物せんといさみあひ
て
下心彌生千句の俳諧に
| | 如行
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あつき喰ふ人の嗅さよ
| | 荷兮
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とろとろと一寐入して目の覺る
| | 越人
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明れは五日の朝、風月亭を立て琵琶嶋を過るに、出
買のものあまた立まじはる聲々
霜はらふにんじん牛房大根
| | 如行
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清洲を過て、秋葉萩原の田面に群れぬる鳥も人見知
り顔なり
旅姿鴨さへ逃ぬあはれ也
| | 如行
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越の渡し舟さしよせて打のり、跡より來る人を待な
どしばし
舟竿の雫も落ぬ氷かな | | 如行
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主股は堤のかた深し、かたかたは淺きと、古人のい
ひしに、今もかはらぬこそ物床しき心ちし侍れ、
遠淺やなみを返さぬ薄氷 | | 如行
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