新薬師寺の金堂にて たびびと に ひらく みだう のしとみ より めきら が たち に あさひ さしたり |
ちかつきてあふき みれともみほとけの みそなはすとも あらぬさひしさ
秋艸道人 |
「あふぎみれども」 高さ二尺四寸の立像にて、決して高しとはいふべからざるも、薬師堂の正面の壇上に、やや高く台座を据ゑたれば、「仰ぎ見る」とは詠めるなり。 この歌の作者自筆の碑は、今虚しくその堂の前に立てり。嶋中雄作君の建つるところ。
『自註鹿鳴集』 |
昭和17年(1942年)4月、建立。最初の會津八一の歌碑である。 昭和18年(1943年)、「香薬師」は盗難に遭い、現存しない。 |
「香薬師」 奈良時代前期と思しき形式を、その製作の細部に有する小像にて、傑作の名高かりしを、昭和十八年(一九四三)第三回目の盗難に罹りたるままにて、遂に再び世に出で来らず。惜みても余りあり。
『自註鹿鳴集』 |