服部嵐雪
『杜撰集』(嵐雪撰)
装遊稿 | 嵐雪亭石中 |
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塔澤記 | 石 中 |
嵐雪の跡を追て |
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巣の中を立得ぬ鳥や花の山 | 竹雨 |
春の句 |
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大井川しづめて落るつばき哉 | 素堂 |
増(憎)愛時々に變じ、眺望刻々にか |
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はる。 |
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松嶋やいらぬ霞が立て來る | 桃隣 |
夏 |
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ほとゝぎす鳴やからすの居ぬところ | 尚白 |
大津の驛に出て |
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あぢさいを五器に盛ばや草枕 | 嵐雪 |
秋 |
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あかねや美濃やときこへたる、な |
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き名のながれとゞまる所は、千日 |
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寺の蓬生の露ときえかへりぬ。盆 |
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のこのごろは、夜ごとに群集し、 |
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逆縁にとぶらふ人もあまた侍りけ |
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り。戒名嵐雪月照と石の塔婆に彫 |
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入たり。あるまじきことならねど、 |
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おりからは思ひかけずおぼえ侍り |
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ければ |
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夢によく似たる夢哉墓參り | 嵐雪 |
青蟾堂の旅宿をたづねて、日數あ |
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りければ、江行の句十四句を得た |
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り。詞書などはべりけれど略之。 |
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青蟾堂 |
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松杉に因(ちなみ)置たりみちの秋 | 仙化 |
茶の花のつぼみて寒しく月盡 |
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まり子の宿を夜深に出て、うつの |
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山を越るころ、まだ朝寒の風はげ |
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しかりければ、火をたける姥にた |
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よりて |
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燒栗といろりへくはるうつの山 |
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大井川 |
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川越の鳶と舞たり秋の水 |
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鈴鹿山 |
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すゞか山その色顔や木の葉猿 |
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義仲寺の師父の庵に參りて、木曾 |
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殿の古戰場曉の夢もすごく、ばせ |
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を亡師の風雅の地夕寂たり。往來 |
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の旅人、逆縁にとぶらひ、都鄙の |
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門人順縁に拜す。句々は梢を撓、 |
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青樒四序に凋さず、門下某その徳 |
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風に笠をとられて、靈前にかしら |
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を投ず。 |
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菊の香に鳩も硯の水添へり |
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松は花よりおぼろにて と侍りけ |
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れば |
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唐崎は朧に似たり鶴の松 |
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七夕は難波に侍りて |
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場(には)土を踏やよとての星むかへ |
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難波の遊女のまち通り侍りけるに、 |
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霜月のいく日よりか、灯を停止せ |
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られて、ひそやかなりければ |
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あたゝかに君を見ませる炭火哉 |
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住よしにて |
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杖突た禰宜も出るや夏かくら |
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梢より戸を明さする水鶏哉 |
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冬 |
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ばせを庵の芭蕉もいまだういうい |
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しかりける秋、桐の葉の一葉とへ |
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と、つげこし給へることなんど、 |
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思ひ出られ侍りて |
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錢ほしとよむ人ゆかしとしのくれ | 嵐雪 |
初雪や浪に伊吹の風はづれ | 千那 |