森川許六

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『旅舘日記』

表紙に「元禄五壬申秋七月 五老井主人家珎」と自筆で墨書。

元禄5年(1692年)から6年にかけての句が収録されている。

   旅行のとき

初秋やひたびら越に軒の雨

   鳴海瀉(潟)を過る

稲妻や山なき国の朝ぼらけ

   嶋田金やの送り火を見て

聖霊にならで越けり大井川

   宇津の山

十団子(とをだご)も小粒に成ぬ秋の風

   七月十五日到清見寺

盆棚やむかひは冨士よ清見寺
   許六

十月三日旅亭をたゝれける日初しくれふりけれは

けふ斗人も年よれ初時雨
   翁

 有明となれは度々しくれ哉
   許六

年々や猿にきせたる猿の面
   翁

 真白にかしらの花や季男
   許六

   梅 月

春もやゝけしきとゝのふ月と梅
   翁

六月の末つかた信濃の國臼井峠を越るに善光寺へ詣つる法師はらの汗をなかしけるを見て

信濃の路や蠅にすはるゝ痩法師
   許六

   同旅行   かけ橋にて

かけ橋やあふなけもなし蝉の声
   同

鎌倉は生て出けむ初かつを
   翁

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