俳 書
『しぐれ会』(文化6年刊)
四来奉納 |
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尾張名古屋 |
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夕時雨するや山家の小石壁 | 士朗 |
月か出て又何処へやら鴨の声 | 岳輅 |
初雪やはつかに庵の鮭二寸 | 桂五 |
三河 |
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夜あけるといふ声したり網代守 | 秋挙 |
初霜を起て見てしるおろかさよ | 木朶 |
武蔵千住 |
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冬枯のなつかしき名や蓮台野 | 巣兆 |
大根引昼は凪うと申けり | 春蟻 |
陸奥白石 |
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鳥ともの宿かし鳥もしくれけり | 乙二 |
出羽森岡 |
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時雨ねは淋しかりけり粟津の夜 | 仙風 |
大坂 |
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時雨より先に門さす山家かな | 奇淵 |
大藪のふたつにわかる千鳥哉 | 升六 |
炭かまをさして飛けり夜の鶴 | 雪雄 |
日のもとのけふそ時雨の玉まつり | 瓦全 |
当国平松 |
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舟引の綱に芒にゆくしくれ | 亜渓 |
女 |
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一しくれ持ぬ夕日の檜木山 | 志宇 |
遅 参 |
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女 |
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三ケ月と時雨とかほを合せけり | 浜藻 |
あら寒や立居に見ゆるやふれ傘 | 成美 |
一座捻香 |
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相模鴫立沢 |
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あは海のあはもうれしきしくれ哉 | 葛三 |
香を焚て安臥し、ねむれるを期とし |
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給ふとそ、其終焉を遠く敬慕して |
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粛々としくるゝ音や申の刻 | 千影 |