串に刺したる物を商ひけるを、何ぞと問ひければ、蛤 を乾して侍なりと申けるをきヽて 同じくはかきをぞ刺して乾しもすべき蛤よりは名もたよりあり |
去来曰く、古事古歌を取るには、本歌を一段すり上げて作すべし、喩へば、「蛤よりは石花(かき)を売れかし」といふ西行の歌を取りて、「かきよりは海苔をば老の売りはせで」と先師の作あり。本歌は、同じ生物を売るともかきを売れ、石花は看経(かんきん)の二字に叶ふといふを、先師は生物を売らんより海苔を売れ、海苔は法(のり)にかなふと、一段すりあげて作り給ふなり。「老」の字力あり。 |