その夜は、くろとの濱といふ所に泊まる。片つ方はひろ山なる所の、砂子はるばると白きに、松原茂りて、月いみじうあかきに、風の音もいみじう心細し。人々をかしがりて歌よみなどするに、 まどろまじこよひならではいつか見むくろどの濱の秋の夜の月 |
子規なくや黒戸の濱庇 愚考、黒戸濱は上総也。良玉集に「まどろまじこよひばかりはいつか見む黒戸の濱の秋の夜の月」、黒戸の濱の濱庇とたゝみかけて句作り玉ひし濱ひさしは真砂の波にかけ落て尚ごとく見ゆるをいふ。
『芭蕉翁句解参考』(月院社何丸) |
「等栽」は佳峰園鳥越等栽。「幹雄」は春秋庵三森幹雄。「乙彦」は対梅宇萩原乙彦。書家萩原秋巌の養子となる。 |