芭蕉の句
市人にいで是うらん雪の笠
抱月亭 | |||||
市人にいで是うらん笠の雪 | 翁 |
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酒の戸をたゝく鞭の枯梅 | 抱月 |
是は貞享のむかし抱月亭の雪見なり。おのおの此第三すべきよしにて、幾たびも吟じあげたるに、阿叟も転吟して、此第三の附方あまたあるべからずと申されしに、杜国もそこにありて、下官(やつがれ)もさる事におもひ侍るとて |
朝がほに先だつ母衣を引づ(ず)りて | 杜国 |
と申侍しと也。されば鞭にて酒屋をたゝくといへるものは、風狂の詩人ならばさも有べし。枯梅の風流に思ひ入らば、武者の外に此第三有べからず。しからば此一座の一興はなつかしき事かなと、今さらにおもはるゝ也。 |