キネマの街 あをいキネマの 月が出て キネマの街に なりました。 屋根に 黒猫 居やせぬか。 こはい マドロス 來やせぬか。 キネマがへりに 月が出て 見知らぬ街に なりました。 |
金子みすゞは、大正12年(1922年)、20歳のとき、生まれ故郷の山口県大津都仙崎村(今の長門市仙崎)から、下関の母のもとに移り住みました。そして、この場所にあった商品館内の上山文英堂支店で働きながら、たくさんの詩を創作しました。 『童話』などの雑誌に投稿した作品が、西條八十から絶賛され、全国の若い投稿詩人の憧れの星となりました。 昭和2年(1927年)夏、みすゞの願いがかない、師と仰ぐ西條八十と、下関駅(旧下関駅)で念願の出会いをしました。 |
平成22年(2000年)10月、下関商高会議所女性会創立30周年記念に建立。 |
ふしぎ わたしはふしぎでたまらない、 黒い雲からふる雨が、 銀にひかっていることが。 わたしはふしぎでたまらない、 青いくわの葉たべている、 かいこが白くなることが。 わたしはふしぎでたまらない、 たれもいじらぬ夕顔が、 ひとりでぱらりと開くのが。 わたしはふしぎでたまらない、 たれにきいても笑ってて、 あたりまえだ、ということが。 |
すなの王国 わたしはいま すなのお国の王様です。 お山と、谷と、野原と、川を 思うとおりにかえてゆきます。 おとぎばなしの王様だって 自分のお国のお山や川を 、 こんなにかえはしないでしょう。 わたしはいま ほんとにえらい王様です。 |