酒と旅を愛した行乞の俳人種田山頭火は、またこよなく温泉を愛した。昭和7年秋51歳の時小郡の「其中庵」に庵住してからはよく12キロの道を歩いて湯田温泉にやって来た。その其中庵も風雨でいたみ、昭和13年11月末、山頭火は湯田前町竜泉寺の上隣に四畳一間の部屋を見つけて移り住んだ。風のごとくやってきたというわけか、「風来居」と命名し、相変らず句作と旅と酒があれば酒に徹するといった日々を送っていたが、昭和14年初秋再び行雲流水のことばそのまま、遠く四国松山の地へ去って行った。 小郡・湯田に居た間に湯田温泉をよんだ句は多いが、中でも句集『草木塔』に収められた異色の句 ちんぽこもおそそも湧いてあふれる湯 はユーモラスでしかも人間みなはだかといった禅味あふれる句として、ひそかに人口に膾炙している。この碑に彫られた句は山頭火の日記からとった自筆である。 |
『山頭火句碑集』(防府山頭火研究会)によれば、20番目の山頭火句碑である。 |
昭和五十年八月頃、雑誌『温泉』の女性編集長が湯田温泉に取材に来て、「山頭火の句に湯田温泉で作った“ちんぽこ”の句があるが、温泉場にふさわしいユーモラスな句なので、ぜひ碑にして湯田温泉を全国にPRしては。」と勧められ、これが建碑の動機となった。 |
除幕式は同年十一月三十日、当日は大山澄太先生も来られ、珍妙な句の由来を参列者に講演され喝采を浴びた。建立に当たり受けた批判も、これで吹き飛んだ。
『山頭火句碑集』 |
しののめの |
|
よるのうみにて |
|
汽笛鳴る。 |
|
こころよ |
|
起きよ |
|
目を醒ませ。 |
|
しののめの |
|
よるのうみにて |
|
汽笛鳴る。 |
|
象の目玉の |
|
汽笛鳴る。 |
中原中也は明治40年にここ湯田の町に生まれた。 この詩は、昭和8年9月の作です。はじめ「小唄二篇」と題して発表したものですが、後に「童謡」としています。 この詩は小学校の国語の本にも採用されていて、よく知られた詩です。 碑の文字は中也の自筆の原稿によるものです。 |