絶頂を後ろに直下すると、噴火口の大穴が見える。穴の側を辿るように道の跡がある。真向いの風を肩できって、一生懸命に駈ける。突然あれを見ろと若者が声を掛けた。十尋もあろうと思われる穴の底に真青に輝くものがある。火口の沼であると気づく。 |
蔵王山上歌碑 六月四日、舎弟高橋四郎兵衛が企てのままに蔵王山上歌碑の 一首を作りて送る 陸奥をふたわけざまに聳えたまふ蔵王の山の雲の中に立つ |
歌碑行 いただきに寂しくたてる歌碑見むと藏王の山を息あへぎのぼる 七月八日歌碑を見むと藏王山に登る同行岡本信二郎、河野 與一、河野多麻、結城哀草果、高橋四郎兵衛の諸氏 歌碑のまへにわれは來りて時のまは言(こと)ぞ絶えたるあはれ高山や わが歌碑のたてる藏王につひにのぼりけふの一日をながく思はむ
『寒雲』 |
蔵王山 瀑(たき)見るや落木風に鳴るほとり 蔵王の御釜 秋澄みし空の映れる瑠璃を見よ
『晩華』 |