新しく構内に出来た赤煉瓦の建物は、一部は神学部の教室で、一部は学校の図書館に成っていた。まだペンキの香のする階段(はしごだん)を上って行って二階の部屋へ出ると、そこに沢山並べた書架がある。一段高いところに書籍の掛りも居る。時には歴史科を受持つ頭の禿げた亜米利加人の教授が主任のライブラリアンとして見廻りに来る。書架で囲われた明るい窓のところには小さな机が置いてある。そこへも捨吉は好きな書籍を借りて行って腰掛けた。
島崎藤村『桜の実の熟するとき』 |
明治24年(1891年)6月、藤村は明治学院を卒業。 明治25年(1892年)10月、藤村は明治女学校の教師となる。 明治26年(1893年)1月、藤村は教職を辞し、2月1日、関西を放浪。 明治27年(1894年)4月、藤村は明治女学校教師に復職。 |
明治学院校歌 |
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人の世の若き生命(いのち)のあさぼらけ |
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学院の鐘は響きてわれひとの胸うつところ |
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白金の丘に根深く記念樹の立てるを見よや |
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緑葉は香ひあふれて青年(わかもの)の思ひを伝ふ |
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心せよ学びの友よ新しき時代(ときよ)は待てり |
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もろともに遠く望みておのがじし道を開かむ |
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霄あらば霄を窮めむ壌(つち)あらば壌(つち)にも活きむ |
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ああ行けたたかへ雄雄しかれ |
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眼さめよ起てよ畏るるなかれ |
島崎藤村 |