奈良茶椀堆(うづたか)く、 |
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鉢、小壺、犇(ひし)めけるそが中に |
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花瓶(はながめ)は驕(おご)り艶(つや)めき |
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酒坏(さかづき)ハつつましく笑み、 |
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おのがじし適(かな)へる姿、 |
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白玉(はくぎょく)の磁器の膚(はだへ)に |
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染み匂ひ、物をやおもふ、―― |
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丹(に)の色の歓楽の夢、 |
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哀愁の呉須(ごす)の唐草。 |
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静(しづ)もれるその生命(いのち)をば |
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愛(め)でつつも、われや感(かま)けし、 |
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いつしかに、胸にも迫る |
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寂しさの拂ひがたなき。 |
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「有田皿山にて」より |
昭和30年(1955年)5月19日、高浜虚子は星野立子と長崎から有田を訪れた。 |
有田に向ふ 深川別邸泊り 大村湾に沿うて暫く麦の秋 五月二十日 新聞を犬咥へ来る明易き 明易や時刻違へて起き出でし 蚊のをらぬ有田と聞けば旅楽し 美しき故不仕合せよき袷 南山の緑に対す主客かな |
たのしみの有田に入りぬ町は初夏 |
有田陶磁美術館にあった高浜虚子の句碑は有田町黒川甲の「歴史と文化の森公園」に移転した。 |
右の句は昭和30年夏長崎にご来遊なされた時麦秋の大村湾沿ひの帰途有田の招聘により窯元の山荘にご宿泊された折り詠まれた1句であります。 句碑は昭和46年文化の日に際し商工会議所の庭に建立されましたが、平成10年3月に炎の博々覧会場跡歴史と文化の森公園のすばらしい場所に移転建立され、四季の花に囲まれて人々に親しまれております。 |