雲仙を最初に開いたのは、およそ1300年前(701年)、奈良時代の僧「行基」だと云われています。当時「温泉」(うんぜん)は、女人禁制の霊山として、西の高野山と呼ばれる程栄えていました。そのためか、地獄の噴気箇所には、当時の仏教説話にもとづいた地名が数多く付けられています。 明治44年(1911年)には、日本で最初の「県営温泉(うんぜん)公園」となり、昭和9年(1934年)に、瀬戸内海や霧島とともに日本最初の国立公園の指定を受けました。その後、昭和31年に天草地域が追加され「雲仙天草国立公園」となりました。 雲仙の特徴ある自然は、四季折々、違った風景の表情を見せてくれます。「自然と歴史を観る目」をもって、国立公園「雲仙」をお楽しみ下さい。 |
嘉永3年(1850年)12月7日、吉田松陰は長崎遊学の帰途、雲仙に登っている。 |
一、七日 晴。温泉嶽に登る。一老翁を倩(やと)ひて從ふ。老翁説く、眉山の崩るる今を距ること五十九年前なり。其の時海溢れて人死すること鋸萬なりと云ふ。 |
豊臣秀吉、徳川家康らの統一権力の時代に、キリスト教を禁じる政策がとられ、キリシタン禁制と呼ばれました。 江戸幕府は、キリストの絵を人々に踏ませる「踏み絵」をさせて信者を見つけ出し、この雲仙で処刑しました。 キリシタンで長崎に住む清七という男が捕えられ、処刑されましたが、そのころにこの地獄が噴出したといわれ、 この名がつけられました。
環境省・長崎県 |
その昔、島原城下で、たいへん裕福な生活をしていたのに密通をしたあげく、夫を殺してしまったお糸という女がいました。 お糸が処刑されたころにこの地獄が噴出したので、「家庭を乱すと地獄に落ちるぞ」という戒めを込めてこの名前がつけられたといわれます。
環境省 |
大正11年(1922年)3月21日、高浜虚子は雲仙地獄へ。 |
それから歸路矢嶽の麓の坂道を少し上つて九州ホテルの裏に出る。その下に見下す光景は異常な光景であつて、即ち噴火口に當る所であつて、噴烟は到る處に漲つて居る。而して我九州ホテルは丁度その中間に位して居る。元君が噴火口上に舞踏するといふのは丁度此事だと言ふ。温泉事務所も郵便局も其他數棟のホテルも皆此噴火口にあるのであつて、噴烟の中に包まれて居る。それから徐々とその噴烟の中を歩いて見る。何々地獄といふ土地から湯が噴出して居る所が何ケ所かある。道は其間にうねうねとついて居て可成危險な思ひをする。遂に九州ホテルに歸る。夕を食つて暫く雜談し温泉に這入る。温泉は硫黄泉だ。森閑とした山の中の宿は熟眠を貪るのに好適だ。三人各々別室の寢室の中に埋れて寢た。 |
忘却とは忘れ去ることなり |
||||||||
忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ |
||||||||
菊田一夫 |
平成21年(2009年)、岸恵子は『相棒』シリーズ「密愛」の宇佐美悦子役で出演している。 |
大叫喚という名前は、噴気口から聞こえてくる低音(アー、オー) が地獄からの叫び声や喚(わめ)き声のように聞こえることに由来しています。この音はガラス瓶に口を当てて吹きた時にでる低音と同じ原理で、噴気口を火山ガスが勢いよく通る際に発生します。 大叫喚地獄は、雲仙地獄に現在30あると言われる地獄の中で、最も活発に噴気を出しています。噴気が活発な区域は長い年月をかけて西から東に移動していると言われており、ここより西にある旧八万地獄や、更にその西にある原生沼と比べるとそのことがよく分かります。 噴気の温度は、約120℃です。 |
邪見というのは、人をねたむ、みにくい心のことです。 この温泉のお湯を飲むと、夫婦や友達の間で生じた、嫉妬心による不和を解消すると、いわれています。 ところが実際には強酸性の温泉で、とても飲めるようなものではありません。きっと、邪見を捨てる場所ということなのでしょう。
環境省・長崎県 |
雲仙地獄の泥火山は、硫化水素を含む高温の火山ガスによって溶けた岩石が白い泥となって、噴気とともに噴き上がり、火山のような形を造っています。 火山は、火口から噴き出した溶岩が冷えて固まることで山体を作り、溶岩の粘り気によってできる山体の形が異なります。実は、それと同様のことが泥火山でも起こります。水分が少なく泥の粘り気が強いと急峻な形となり、粘り気が弱いと平たい形になります。 その日ならではの泥火山の姿と表情をお楽しみください。 |
昭和27年(1952年)5月22日、水原秋桜子は地獄めぐりをした。 |
地獄めぐり 雲騰り噴煙しづむ松の花 噴煙に雨飛び鳴くは四十雀
『残鐘』 |
昭和51年(1976年)5月25日、水原秋桜子は仁田峠を下って雲仙温泉を通りがかった。 |
下山は別の道をとることになる。やがて温泉町にさしかかったが、前に来たときに比べると、宿の数が非常に多く、賑やかになった。硫黄の香もつよく、方々で煙が立ち登っている。
「長崎と島原」 |