長崎港の一隅 潮汚れ薄暑の漁船群れて泊す
『残鐘』 |
「船は伊王鼻をまわって出島に向った。振り返ると伊王鼻の高台にオランダ国旗がひるがえっていた……。」 これは文政6年(1823年)初来日したシーボルトが、長崎入港の模様を綴った手記の一部である。 また、文政9年(1826年)に作られた『鍋島海防地図』にも、この地の旗立所は記録されている。 長崎の開港(元亀2年・1571年)当時、ポルトガル船員はこの伊王島を『ガバロス島』と呼んで、長崎入港の目印としていた。 古文書『灯明台一件』(慶応元年・1865年)の伊王島見取り図にも、この高台に『元旗立所』と書かれている。 その後、慶応4年・1868年)に灯明台、明治3年(1870年)に洋式灯台が建てられることになるが、この高台から灯台に至る一帯は、日本の海の夜明けの時代から現代にかけて、航海の案内と安全を守ってきた場所である。
長崎市教育委員会 |
高島・五島灘を一望できる絶景ポイントで、世界遺産に登録された端島(軍艦島)も見ることができる。夕暮時には、その名のとおり、水平線に沈む夕陽がとても美しく見える。 |
2012年に公開された高倉健さん最後の主演作品となった映画「あなたへ」。 このコバルトブルーの海に浮かび上がるように建つ白い灯台が映える景色に見覚えはないでしょうか。 長崎でのロケはほとんどが平戸で行われましたが、実はこの場所で高倉健さんが、物語の鍵となる2枚の絵手紙を手放す場面が撮影されました。この場面や絵手紙に描かれた白い灯台が正面に見える「伊王島灯台」です。 |
伊王島灯台公園一帯は、伊王島灯台をはじめ、旧吏員退息所や江戸時代の台場跡等の史跡が多くる。そこからの眺めは、明治時代に灯台が設置された頃を彷彿とさせ、かつ周辺の景観も含めて秀逸である。 この伊王島灯台は慶応2年(1866年)に米・英・仏・蘭の四カ国と改税約書(江戸条約)を結んだ時に全国8ヶ所に設置された灯台の一つである。明治3年(1870年)に、明治政府のお雇い外国人R・H ブラントンの設計により、鉄造六角形の第一等不動灯として建設され、鉄造洋式灯台では日本で初めての構造物であった。 昭和20年(1945年)原子爆弾の爆風により塔部がゆがみ、現在の鉄筋コンクリート四角形に改築されたが、上部は明治4年(1871年)当時のものである。昭和46年(1971年)無人灯台となり、自動装置に切り替えられている。
長崎市教育委員会 |