大正12年(1923年)4月中旬、北原白秋は別所温泉を訪れ柏屋本店に数日滞在、安楽寺を訪れている。 |
安楽寺 春昼散策の二 日のあたる築地のもとに絮(わた)ふかき御形が咲きてうれしき御寺 萱ふかき御堂は框(かまち)光らずて障子いつぱいの閑けき光 おとなひて待つ間は久し檐(のき)板の影は砌の外に移りぬ 寺庭の春の日向に閑けさよ山杉の風まれに音して 寺の子は日蔭の砌つたひ飛び素足さみしか眩し目をせり
『海阪』(道のべの春) |
「四重塔に見える。」と言っている人がいたので、「一番下は裳階(もこし)だと書いてある。」と教えてあげた。 |
建築様式は禅宗様(鎌倉時代に宋から禅宗に伴って伝来した様式で唐様ともいう)八角三重塔で、初重に裳階(もこし)(ひさしまたは霜よけの類)をつけた珍しい形式であるうえに細部もまた、禅宗様の形式からなり類例が少ない。 |