虚子の句碑

咲きみちてこぼれる花も無かりけり



芦屋市月若町の芦屋川沿いに月若公園がある。

月若公園に虚子親子三代の句碑があった。


咲きみちてこぼれる花も無かりけり
   虚子

六甲の端山に遊び春隣
   年尾

日に慣れし花の明るさつづきをり
   汀子

虚子の句は昭和3年(1928年)4月8日、鎌倉で詠まれたもの。

咲き滿ちてこぼるゝ花もなかりけり

      四月八日。潮干句會。鎌倉稲村ヶ崎、堀内別墅。會後妙本寺、光明
      寺の花御堂を見る。會者、秋櫻子素十、みづほ、風生、花蓑、た
      かし、手古奈等二十五名。


年尾の句は昭和26年(1951年)の句。『年尾句集』に収録。

汀子の句は昭和40年(1965年)の句。『汀子句集』に収録。

昭和54年(1979年)10月26日、年尾は78歳で死去。

昭和55年(1980年)3月、芦屋観光協会建立。

 桜の花が咲いたらいいのにと願う人々の心を知っているかのように、花の句の刻まれてある句碑の除幕式に、芦屋川沿いの桜は一斉にほころびはじめた。除幕式の間にも花は色を重ねて行った。

咲きみちてこぼるゝ花もなかりけり
   虚子

六甲の端山に遊び春隣
   年尾

日に慣れし花の明るさつゞきをり
   汀子

 住み慣れた芦屋の月若町の公園に私達親子孫三代の句碑が建つということは、身に余るよろこびと感謝していた。亡くなった父もその話を聞き楽しみに待っていた句碑であった。降りそうな空も句碑除幕式の日をずっと耐えてくれた。

「ホトトギス」昭和55年7月号

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