虚子の句碑

秋風の伊丹古町今通る



伊丹市宮ノ前の猪名野神社に向かう。


昭和24年(1949年)2月、吉井勇は伊丹に白雪の酒蔵を訪れた。

   昭和廿四年二月伊丹の町に白雪の酒藏をおと
   づれて詠める

白雪の酒藏の壁しらじらと伊丹古街練るによろしも

新しぼり琥珀のいろを見て思ふ酒の仙ともならばよけむと

白雪の慶長藏のしづけさのなかに茶禪の寂びをもとめむ

われ醉ひて白雪藏を遅れ出でおのれをまづ言ふ李白似かこれ

『流離抄』

アイフォニックホール裏に高浜虚子の句碑があった。


秋風の伊丹古町今通る

昭和26年(1951年)9月22日、高浜虚子は伊丹を訪れている。

九月二十二日 伊丹、あけび亭 坤者招宴 一泊

 伊丹より京への墓参急行車

 こゝに宿る秋の一夜を記念せん

 思ひ出となるべき秋の一夜かな

 西日去る一間幅の広き縁


こゝに宿る秋の一夜を記念せん

「伊丹、あけび亭。坤者招宴。一泊」とある。もとは酒造の小西さんのお家であつたとか。黒光りのする関西風の趣深い宿であつた。伊丹の古い家並みも昔を思はせ、静かさを心ゆくまで味はひながら休んだ。


23日、虚子は鬼貫の墓に参る。

九月二十三日 鬼貫の墓に参る

 花筒をそよりと出たる秋蚊かな

 秋風の伊丹古町今通る

 酒蔵の秋の日影をなつかしみ


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