上にさぶらひけるを、御遊びありけるついでに、「今日は六日の御物忌あく日にて、かならず参りたまふべきを、いかなれば」と仰せられければ、ここにかうとまらせたまひにけるよし聞こしめして、御消息あるなりけり。御使は蔵人弁なりけり。 「月のすむ川のをちなる里なれば桂のかげはのどけかるらむ うらやましう」とあり。かしこまりきこえさせたまふ。上の御遊びよりも、なほ所がらのすごさ添へたる物の音をめでて、また酔ひ加はりぬ。
『源氏物語』(松風) |
月のすむ河の |
をちなる里なれば |
かつらの影は |
のどけかるらむ |