「初真桑竪にやわらん輪にやせん」の芭蕉の句はこの地の鐙谷(あぶみや)という船問屋での作であると言い伝えられておる。「真桑瓜竪にやきらん輪にやせん」とか書いてあるという。鐙谷というのは西鶴の永代蔵にも出ておる名高い問屋であるそうな。 |
『泊船集』には「初真桑たてにやわらむ輪に切ん」とあり、「此句は酒田にての吟なりいつれの集にやら四ッにやわらん輪にやせんとあやまりしるしけり」とあるが、これは『泊船集』の誤りである。 「真桑瓜竪にやきらん輪にやせん」とか書いてあるというのは誤りである。 |
あふみや玉志亭にして、納涼の佳興に瓜をもてなして、発句を乞ふ(う)て曰、「句なきものは喰(くらふ)事あたはじと戯ければ |
初真桑四にや断ン輪に切ン | ばせを |
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初瓜やかぶり廻しをおもひ出ヅ | ソ良 |
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三人の中に翁や初真桑 | 不玉 |
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興にめでゝこゝろもとなし瓜の味 | 玉志 |
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元禄二年晩夏末 |
元禄2年(1689年)6月23日、象潟から酒田に戻り、酒田の近江屋三郎兵衛宅で詠まれた句である。 |
廿三日 晴。近江や三良兵へへ 被レ招。夜ニ入、即興ノ発句有。
『曽良随行日記』 |